第九十三話 ノリオの個室 その6
「ちょっと真剣な話をするよ。ノリオくん」
サクラコが今までにない真剣な表情になった。
「はい、サクラコさん」
「はっきり言って、ノリオくんの見た目は私の好みじゃない」
「はい、分かっています」
ノリオはあっさりと応じた。
「ショックじゃないの?こんなこと言われて?」
「僕も鏡という物の存在は知っていますよ。サクラコさんみたいな美少女と僕は釣り合わないということも分かっています。はっきり言えば僕が『ラッキーパーソン』じゃなかったとしたらサクラコさんは僕と友達になろうともしなかったでしょう?」
「その通りね。何だかんだいっても『見た目』というのは恋愛における重要な要素よ」
ノリオは苦笑した。
「西暦時代からドラマや小説や漫画では『見た目よりも中身が大事』と言われますが?」
「会ったばかりの人の中身が分かるわけないでしょ、すぐ誰にも分かるのは見た目なのだから、恋愛物には『一目惚れ』が多いけど、見た目が良くなければ一目惚れは成立しないでしょ?」
「恋愛物で主役になるのは西暦時代も今もたいてい『美男美女』ですからね」
「そう、『作り話』は楽しむものよ。美男美女が主人じゃなきゃビジュアル的に楽しめないでしょ?」
「そうですね。では、僕は『主役失格』ということでしょうか?」
サクラコは軽く首を横に振った。
「そんなことはないわ。ノリオくん」
「ヘタな慰めはしないでください」
「恋愛物で主役の男性のパートナーになる女性はたいてい美女だけど、男性は『平凡な見た目』なのはよくあることじゃない」
「だけど、それは話を面白くするためでしょう。大多数の男性から見れば『自分と同じ平凡な男が美女にモテるお話』は自分の願望をフィクションで満足させるための手段ですから」
「『平凡な男が複数の美女にモテまくる』いわゆるハーレム物も男たちの願望でしょ?あなたはハーレム物が好みだと聞いたけど?」
「確かに僕は、ラノベやアニメのハーレム物は好きです」
「それなら私という美少女、ノブヨおば様という美女、ハナちゃんという美幼女三人とハーレムがつくれるチャンスを自分から手放すのは、何でなの?」
「現実にハーレムをつくるのは難しいですよ。ラノベなんかでは女性キャラたちは関係が良好ですけど、実際にはむしろ中華風ファンタジー世界の後宮の妃たちの勢力争いみたいに険悪になりますよ」
サクラコはうなづいた。
「なるほどね。だけど、一人とだけお付き合いするならば、ノブヨおば様じゃなくて私でもいいんじゃない?」
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