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第九話 リングの授業 その2

カグヤ・ベースで地球人類側の代表となったのは、滞在していた日本人の宇宙飛行士であった。


地球の先進国が月面に基地を建設するようになって、「月面基地が異星人とファーストコンタクトする可能性が高い」との議論が国際的にされるようになった。


なぜなら、未確認飛行物体いわゆるUFOが地球近辺で頻繁に目撃されるようになり、異星人の存在が現実的になったからである。


そのため、国際条約で「異星人とファーストコンタクトした場合」を想定して、各国の宇宙飛行士は、シミュレーションによる異星人との交渉の訓練が義務になっており、宇宙飛行士が異星人との交渉にはふさわしかったからである。


アメリカ・ロシア・中国などは、異星人との交渉に参加させるように日本政府に強硬に申し入れた。


だが、異星人側が「カグヤ・ベースとしか通信しない」とハッキリ言ったため、日本が異星人の交渉を独占することになった。


当初、異星人との交渉はカグヤ・ベースを戸惑わせた。


異星人は、自身の種族名も個人名も教えてくれなかったのだ。


異星人の母星の名前も位置も教えてくれなかった。


当初、カグヤ・ベースでは異星人を異星人の政府の「外交官」「軍人」「探検家」だと想定していたが、そのどれでもなかった。


異星人は個人用自家用宇宙船で、一人旅を楽しんでいたのだ。


カグヤ・ベースが「旅行者」と呼ぶことにした異星人が地球近辺に現れたUFOを送り込んでいたことが分かった。


UFOは地球で例えれば撮影用のドローンで、太陽系の景色を「旅行者」は撮影していたのだった。


それは、「旅行者」自身が太陽系に来る前の「下見」だったのだそうだ。


「旅行者」がカグヤ・ベース近くに着陸した目的は「旅のお土産」を購入することであった。


「旅行者」が購入を希望したのは、「紙の本」であった。


「旅行者」の社会では、「本」は全てデータとなっており、紙の本を印刷・製本する技術は失われてしまっていたのだ。


地球においても電子書籍の普及により、紙の本は激減しているが、今でも紙の本を愛好する人たちはいるので、特に日本ではマンガ・ライトノベル関連が大量に出版されていた。


「旅行者」が、地球のテレビ放送の電波を受信して見た日本のアニメの原作を欲しがったのだ。


日本政府は、急遽宇宙船を手配して、「旅行者」が望んだ大量の本を月面に送った。


日本は厳密に決められていた月面開発のための宇宙船のスケジュールを大幅に変更しなければならなかった。


だが、それだけのことをする意義はあると判断された。


なぜなら、本の購入代金は「リング」だったからだ。

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