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第八十九話 ノリオの個室 その2

「小川艦長は、ものすごい美人さんで、僕に好意を持ってくれている。それは男として正直嬉しい。だけど……」


「だけど……何でしょうか?ノリオ様」


 ノリコの質問にノリオは答えた。


「やっぱり、僕が『ラッキーパーソン』じゃなかったら気にも止めてくれなかったんじゃないかな?」


「その通りでしょうね」


 ノリコはあっさりと答えた。


「あの……ノリコさん、そこは『そんなことはありません』と言うところじゃありませんか?」


「私はアンドロイドです。人間のように気休めの嘘を言うことはできません。ですが、ノリオ様が『ラッキーパーソン』だということは『切っ掛け』に過ぎないと思います」


「『切っ掛け』って?」


「ノブヨ姉さんは確かにノリオ様が『ラッキーパーソン』だから気にするようになったのでしょうが、それだけならば、あくまで『上官と部下』の関係止まりだったでしょうが、明らかにノブヨ姉さんはプライベートでノリオ様と関係を深めようとしていますよね?」


「うん、そうだけど……あれ?何でノリコさんは今までの小川艦長と僕のことを知っているの?」


「ノブヨ姉さんから、この宇宙護衛艦『しなの』の内部にある記録用カメラからの映像を提供されました」


「そうなんだ。アンドロイドのノリコさんなら短時間で映像を分析できるよね」


「それで、話を戻しますが、ノブヨ姉さんは本気でノリオ様と親密になろうとしていますが、ノリオ様はあまり乗り気には見えません。それは何故でしょうか?」


「僕は女の人とお付き合いした経験が全然無いんだ。だから、僕の母親と同世代の小川艦長にどう対応したらいいのか分からなくて」


「まさか、ノリオ様のお母様とノブヨ姉さんが同世代だから拒否しているということはありませんよね?やっぱり、ノリオ様も世間一般の男性のように若い女性の方が良いのですか?」


 ノリオは首を軽く横に振った。


「いいや、むしろ僕は小川艦長のような歳上の経験豊富な女の人にリードされた方が上手く行くと思う」


「それなら、遠慮せずにノブヨ姉さんに身をゆだねれば良いのではないですか?」


「僕と小川艦長が本気でお付き合いすれば、『結婚』という話になるよね?そうすれば、僕と小川艦長の子供の話も出てくる」


「ノブヨ姉さんは西暦ならば高齢出産の年齢ですが、今の医療技術なら何も問題はありません」


「うん、それは分かっている。それなら、子供が生まれたら僕がいっそのこと自衛隊を辞めて『専業主夫』になろうかもと考えている」

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