第八十二話 小川艦長対アンドロイド その1
「アンドロイド!お前は私とおしゃべりをしたいのではないだろ!私と一対一の格闘戦をしたいのだろ!?」
「はい、その通りです」
「じゃあ、さっさと始めよう。どころで、どういうルールでやるんだ?」
「小川艦長の方で決めてください」
「私の方で決めていいのか?」
「はい、私の方が無理なお願いをしたのですから、そちらでルールは決めてください」
「それじゃあ……」
小川艦長は部屋の中を見回して、考える顔になった。
「まずは……試合の範囲はこの部屋の中だけ、この部屋から出たら反則負けになる。それはいいか?」
「はい、それでよろしいです」
「次は、武器の使用は禁止。自分の身体だけが攻撃手段になる。棒切れでも使えば反則負けになる」
「はい、それでよろしいです」
「そして、ルールは基本的に相撲と同じにする」
「スモウレスリングですか?ここにはドヒョウサークルはありませんが?」
「身体の足の裏以外が床か壁についた方を負けとする」
「はい、それでよろしいです」
「そして、勝敗を判定する審判だが……」
小川艦長は隣にいてずっと黙っていたノリオに視線を向けた。
「このノリオ•大原二等宙士にやってもらう」
「小川艦長、異議があります」
「アンドロイド、何の異議があるんだ?」
「ノリオ•大原二等宙士は小川艦長の部下です。こういう場合は中立的な第三者が審判をするのが普通なのでは?」
「アンドロイド、お前は人間に対して『反乱』をしている状態なんだぞ。『中立的な第三者な人間』が存在すると思っているのか?」
アンドロイドは即答した。
「小川艦長のその発言は妥当です。審判をノリオ•大原二等宙士官がするのを受け入れます」
「じゃあ、軽くウォーミングアップをするから少し待っていろ」
「了解いたしました。小川艦長」
小川艦長はアンドロイドから離れるとウォーミングアップを始めた。
ノリオが小川艦長に小声で話し掛けた。
「小川艦長、事前に『私がアンドロイドとの会話で何を言っても驚いたりするな』と言われていたから黙っていましたけれど、僕が審判をするなんて聞いてませんよ」
「言ってなかったからな」
「あの……僕に小川艦長に有利な判定をしろということで?」
ノリオは冗談のように言ったが、それに対する小川艦長のノリオに向ける視線は厳しかった。
「大原二等宙士、冗談でもそのようなことは言わないでくれ、私もアスリートの端くれだ。そのようなことはしない。君はルールに従って見た通りに判定をすればいい」
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