第八十一話 日米宇宙軍合同演習 その14
「アンドロイド!お前の所有者は何でそんなことをしたんだ!?」
少し怒っている小川艦長に対してアンドロイドは冷静に答えた。
「小川艦長、申し訳ありませんが、『何でそんなこと』とは何に対する質問でしょうか?具体的にお願いします」
「お前の頭部を所有者が私の画像データを参考にして製作した理由を聞いているんだ!」
「所有者は私にその理由を明確に教えてくれたことはありません」
「そうか、アンドロイドであるお前が知っているとは限らなかったな」
小川艦長は怒りを鎮めた。
「しかし、私の推測でしたら話せます」
「推測だと?話してみろ」
「所有者は小川艦長が低重力レスリングの選手だった時の動画を何度も見ていました」
「なるほど、私のファンだったということか。それで別の質問だが、なぜ、私と一対一の格闘戦をお前は要求したのだ?」
「私の所有者の望みです」
「お前の所有者の望み?」
「はい、私の所有者は御自分が製造したアンドロイドが一対一で小川艦長と格闘戦で勝負したらどうなるかを知りたいと思っていました」
「そのお前の所有者だがな……言いにくいのだが……」
口ごもる小川艦長に対してアンドロイドはあっさりと言った。
「死亡されたのでしょう?」
小川艦長は少し驚いた。
「知っていたのか?」
「『ウィスコンシン』と『しなの』の交信を傍受していました」
「うむ……大変ショックなことであろうが……」
アンドロイドは微笑んだ。
「小川艦長、おかしなことを言われますね」
「何がおかしいのだ?」
「今の小川艦長の発言は、所有者が死亡したことにより私が精神的なショックを受けたであろうことを気づかったのですよね?」
「そうだ」
「私は人工知能で動くアンドロイドです。人工知能はまだ人間並みの『感情』があるレベルのものは開発されていません。所有者が死亡しても精神的なショックを受けることはありません。なのにありもしない私の『感情』を気づかわれるのがおかしくありませんか?」
「仕方ないだろう。お前は人間そっくりで、しかも私に顔がそっくりなんだから」
「確かにデータによると人間は、人工知能の搭載されていない話さない動かない人形やぬいぐるみに知性があるかのように話しかけることがあります」
「そうだろう。おかしなことじゃない」
「ですが、データによると、そういった行動をするのは幼い子供が多いそうですが、小川艦長も幼いところがあるのですね」
「お前は私をからかっているのか!?人間の『感情』を理解しているのか!?」
「いいえ、『感情』を理解してはいません。データから人間の行動パターンを予想しているだけです」
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