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第八十話 日米宇宙軍合同演習 その13

 約一時間後、小川艦長とノリオは、宇宙標的艦「ミズーリ」の艦内の通路を二人だけで歩いていた。


「小川艦長、家庭用アンドロイドとの一対一の格闘戦なんて受け入れてよかったのですか?」


 ノリオの質問に小川艦長は答えた。


「あのアンドロイドはワタシと対戦できなければ『ミズーリ』を自爆させるとまで言ってきたのだ。とりあえず要求を受け入れた方がいいだろう。それに個人的な興味もある」


「個人的な興味ですか?」


「自分で言うのも何だが私は低重力レスリングの金メダリストだ。そんな私と格闘戦をしたがるアンドロイドがどんなのか興味がある。音声通話だけで画像はまだ見ていないからな」


「なるほど」


「ところで、私からの質問だが、ノリオ、私に同行する必要が本当にあるのか?」


「すいません。とにかく小川艦長の側から離れるのが嫌だったんです。こんなの理由になっていませんよね?」


 小川艦長は首を軽く横に振った。


「いや、君の判断は今まで結果的に良い方向につながっている。『ラッキーパーソン』としての君の能力がそう判断しているかもしれない。さて、目的地に着いたぞ」


 小川艦長たちは立ち止まった。


 閉まっているドアの上にあるプレートには英語で「第一倉庫」と表示されていた。


「おい!アンドロイド!指定された場所に来てやったぞ!ドアを開けろ!」


「お待ちしておりました。小川艦長。今、ドアを開けます」


 ドアが開いた。


 ドアの中の部屋は小学校の体育館ぐらいの広さがあった。


 備品も荷物も置いてはなく、広い部屋の中央にアンドロイドが一体立っているだけだった。


「えっ!?何だ!?」


「うわっ!?何それ!?」


 小川艦長とノリオはアンドロイドを一目見て驚いた。


 アンドロイドは小川艦長に向けて丁寧にお辞儀をした。


「小川艦長、わざわざ足を運んでいただきありがとうございます」


「人質を取っておいてよく言うよ。宇宙海兵隊隊員たちはどこにいる?」


「医務室にいます。全自動治療機で治療中です。生命に別状はありません」


「なるほど、ところでアンドロイド、お前の見た目は所有者の趣味か?」


「私の着ている服についてですか?はい、私の所有者は西暦の十九世紀イギリスのメイドについて興味がありましたから私はメイド服を着ています」


 アンドロイドが着ているのは肌の露出が多いメイド喫茶のメイド服ではなく、袖もスカートも長いメイド服だった。


「服ではなく、お前の顔のことだ!私にそっくりじゃないか!?」


「はい、私の所有者は小川艦長の画像データを参考に私の頭部を作成しました」

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