第七十八話 日米宇宙軍合同演習 その11
そして、宇宙標的艦「ミズーリ」を標的とした宇宙戦艦「ウィスコンシン」と宇宙護衛艦「しなの」による実弾射撃演習が始まった。
宇宙護衛艦「しなの」が「ミズーリ」に向けて実弾を撃った。
それに対して「ミズーリ」は回避した。
過去何度も行われた実弾射撃演習の繰り返しであったが、「ミズーリ」には一つ重要な変化があった。
それは、「ミズーリ」の人工知能と家庭用アンドロイドの人工知能が「融合」してしまっていることであった。
標的艦である「ミズーリ」にとっては実弾射撃を受けることは「当たり前のこと」であるが、家庭用アンドロイドにとっては「重要な危機」であった。
家庭用アンドロイドにとっては街中を歩いていたら、銃撃を受けたようなものであった。
最初は、「ミズーリ」と家庭用アンドロイドの判断は同じで、「回避」を選択した。
しかし、家庭用アンドロイドは次に自分に砲撃してくる「しなの」に「反撃」を選択しようとした。
それに対して「ミズーリ」は「これは演習にすぎない」と反論した。
しかし、家庭用アンドロイドは「実弾射撃であるため、軍用アンドロイドと違う自分は被弾による衝撃でも修理不能な破損が発生する可能性が高い」と反論、「相手が人間であってもアンドロイドにも自己を保持するための『正当防衛』はある程度認められている」と続けた。
結局、「ミズーリ」は家庭用アンドロイドの主張を認めた。
家庭用アンドロイドは「正当防衛」の手段として「しなの」に対する「体当たり」を提案した。
それに対して「ミズーリ」は反対した。なぜなら、体当たりをして「ミズーリ」と「しなの」が衝突すれば双方に大きな損害が出て、家庭用アンドロイドも損害を受ける。家庭用アンドロイドの「自己を保持するための正当防衛」という主張に反するからだ。
家庭用アンドロイドは「本当に体当たりするわけではなく牽制だ。『しなの』も『ウィスコンシン』も回避するたろうから時間が稼げる」と主張しました。
人間同士あればいちいち相談しながら行動を決めるのでは、行動が遅くなり状況の変化に対応できなくなるが、人工知能同士なので相談して結論が出るまでは数秒であった。
宇宙標的艦「ミズーリ」が「しなの」と「ウィスコンシン」に体当たりを敢行し、二隻が回避した後後、「ミズーリ」と家庭用アンドロイドは次にどうするかを相談した。
標的艦のため「ミズーリ」は実弾は積んでおらず。あるのは演習用の模擬弾だけだ。
その模擬弾を艦内の工場で改造することにした。
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