第七十五話 日米宇宙軍合同演習 その8
ワシントン艦長はさらにデータを調べてスキナヨニーに報告した。
「スキナヨニー准将。この家庭用アンドロイドは、普通の家庭用アンドロイドではないようですね」
「普通のじゃないって、どういうこと?」
「普通の家庭用アンドロイドは家で料理や掃除などをするための物ですが、この家庭用アンドロイドは一般販売用ですが、ある程度の戦闘能力があります」
「警備用アンドロイドじゃなくて、家庭用アンドロイドなのに、なんで戦闘能力があるの?」
「高級品の家庭用アンドロイドでは、幼い子供を外に散歩や遊びに連れて行ったりする能力のあるものもあります。そのため幼い子供を誘拐などの危険から守るために戦闘能力がつけられています」
「なるほど、でも、その戦闘能力って、一般的な犯罪者に対応するためのものだろう。戦闘のスペシャリストの宇宙海兵隊員に勝てるわけがない。なのに、なんで今の状況になっているの?」
「この家庭用アンドロイドの所有者だった作業員が個人の趣味として改造をしていたようです」
「その改造について詳しくわかる?」
「軍の備品ではなく、私物でしたのでデータにもともと記録されていなかったようです」
「じゃあ、所有者の作業員に直接問い合わせよう。今、どこにいるか分かる?」
「調べますので、お待ちください……数年前に定年で退職していて、故郷の地球のアメリカのカルフォルニア州の田舎に移って……えっ!?」
「どうしたの?」
「作業員は去年亡くなっています。『事故死』だそうです」
「事故死?その事故に不審な点はないの?」
「自宅の屋根の修理を自分でしようとして、屋根から転落したそうです。防犯カメラで撮影された動画があり、地元警察の調べでは不審な点はないそうです」
「それなら、今、戦っている海兵隊員に直接聞くしかないけど、状況はどうなっているの?」
「『ミズーリ』艦内に乗り込んだ五名の内、ニ名がアンドロイドの攻撃により戦闘不能にさせられました。ただし、そのニ名に命に危険はありません。手足を骨折させられたそうです」
「アンドロイドはどんな攻撃をしてきたの?」
「アンドロイドは刃物や銃火器などの武器は持たず、素手での格闘術で攻撃してきたそうです」
「その映像はないの?」
「隊員たちが身体につけている小型カメラは最初の不意の一撃ですべて破壊されたので、通信は音声のみです」
「直接、僕に隊員たちとの通信をつなげろ」
「了解」
「こちはスキナヨニー准将だ。応答せよ。……おい!どうした!?こちらスキナヨニー准将だ!返事をしろ!」
予想外の声がスキナヨニーに聞こえた。
「ワタシは『ミズーリ』だ。艦内の侵入者は制圧した」
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