第七十四話 日米宇宙軍合同演習 その7
大型モニターには少し動揺しているスキナヨニー准将が映っていた。
「ワシントン艦長。標的艦の『ミズーリ』に戦闘用アンドロイドなんて載せていたの?」
「過去のデータを検索したところ『ミズーリ』に戦闘用アンドロイドを載せたという記録はありません」
「だけど、『ミズーリ』艦内に乗り込んだ宇宙海兵隊員はアンドロイドに襲われているんだろ?そのアンドロイドはどこから……」
「お待ちください。データにありました。家庭用アンドロイドが一体『ミズーリ』の艦内にあります」
「なんで家庭用アンドロイドがあるの?」
「『ミズーリ』は普段は無人ですが、メンテナンスなどのために人間の作業員が艦内に長時間滞在することがあります。その作業員のお世話用に家庭用アンドロイドがあるようですね。おや、これは……」
「どうしたの?」
「データによると『ミズーリ』艦内にある家庭用アンドロイドは宇宙軍の所有物ではなく作業員の私物です」
「私物の家庭用アンドロイドって?」
「作業員たちは宇宙軍の経費での家庭用アンドロイドの支給を求めましたが、認められなかったので作業員の一人の私物の家庭用アンドロイドを『ミズーリ』に持ち込んだそうです」
「その私物のアンドロイドがなんで『ミズーリ』の艦内に残っているの?作業員が作業が終わって退艦したのなら、アンドロイドも一緒に退艦しているんじゃないの?」
「データによると所有者である作業員が『ミズーリ』に残していったようです」
「なんで?」
「『ミズーリ』の艦内に私物のアンドロイドを持ち込むための手続きが、かなり面倒だったようです。アンドロイドを退艦させると、次回の作業の時に同じ手続きをしなければなりませんから」
「なるほどね」
スキナヨニー准将が納得した理由はこうだ。
宇宙軍では規則で「ミズーリ」のような人工知能で動く無人宇宙船への他の人工知能の持ち込みは厳しく制限されている。
人工知能の制御の「乗っ取り」を怖れているからだ。
宇宙戦闘艦用の「ミズーリ」の高性能の人工知能が家庭用アンドロイドの人工知能に乗っ取られることは、まずありえないが、規則が厳密に適用されたのだろう。
「でも、家庭用アンドロイドなら宇宙海兵隊員が襲われても安心だ。簡単に制圧できるだろう?」
「いえ、報告が来ました。『ミズーリ』の艦内に乗り込んだ宇宙海兵隊員五名の内ニ名が、アンドロイドにすでに戦闘不能にさせられました!」
「なんで、家庭用アンドロイドに宇宙海兵隊員が負けているの!?」
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