第六十四話 宇宙戦艦「ウィスコンシン」 その5
小川艦長の質問にノリオは答えた。
「僕は『同性の男性』を恋愛の対象にしたことはありません」
「本当に、本当だな?我が日本は『同性愛』についてアメリカなどにくらべると、いまだに偏見があるから隠していはいないか?」
「僕は他人が同性愛者であることに偏見はありませんが、僕自身は同性愛者じゃありません」
「本当に『美少年』『可愛い男の子』に興味はないのだな?」
「『男の子』に興味は……あっ!?」
「どうした?」
「あの……『男の子』には興味ありませんけど、『男の娘』には興味あります」
「『男の娘』とは女装した男子のことだな?」
「そうですけど、現実の女装男子には興味ありません。マンガ・ラノベ・アニメのキャラクターの『男の娘』に興味があるんです」
「それじゃあ、スキナヨニー准将が女装したとしても、キミは興味ないんだな?」
「もちろんです。繰り返しになりますが、僕はマンガ・ラノベ・アニメの『男の娘』に興味はありますが、現実の女装した男子には興味はありません」
セーラー服は跳躍暦百五十年でも日本国における中学・高校の女子用制服として指定されている学校は多い。
ノリオの目の前にいる人物が着ているのは夏用のセーラー服だ。
半袖から出ている腕は白くて細いが健康的だ。
短めのスカートから出ている足も同様だ。
髪は金髪をショートカットにしている。
このセーラー服を着ている人物を見れば、たいていの人は「日本国に来ている白人の金髪碧眼少女の留学生」だと思うだろう。
「だが、男だ!」
ノリオは西暦の二十一世紀から使われている言葉を思わず叫んでしまった。
セーラー服を着ているのはスキナヨニーだ。
小川艦長は冷静に対応している。
「スキナヨニー准将閣下。先ほどは『一時間後にウィスコンシンに来てくれ』とのお話でしたが、なぜ『しなの』にそちらが来たのですか?」
ここは宇宙護衛艦「しなの」艦内の応接室。
部屋にいるのは、ノリオ、小川艦長、スキナヨニー准将の三人だ。
小川艦長の質問にスキナヨニーは答えた。
「よく考えてみると、『ウィスコンシン』にノリオを連れてきてって命令しても、ノブヨには拒否する権利があるんだもんね」
「その通りです。『ラッキーパーソン』の安全を守るためには私には普段より大きな権限を与えられています」
「だから、俺の方から、ここに来たというわけだよ。でも、俺が『しなの』に乗船するのを拒否することもできたんじゃないか?」
「もちろん、できますけど、同盟国の准将の乗船を拒否したとなると、後から問題になりますので」
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