第五十九話 カグヤ・シティ その14
ノリオに言葉にノブヨは答えた。
「君の階級はそうだが、君は『ラッキーパーソン』だ。かけがえのない人物だ」
「ノブヨさん。前にも似たようなこと言ったことがあると思いますけど、僕の実力じゃなくて、たまたま宝くじの一等に当たったようなものです」
「たが、宝くじの一等に当たったばかりに身を持ち崩した者もいる。君はそうじゃないだろ?」
「買いかぶりです。これから僕はそうなるかもしれませんよ?」
「ノリオ。例え話をするぞ。少し長くなるが最後まで聞いてくれるか?」
「はい、ノブヨさん」
「君が私に『今の姿のまま艦内を歩き回れ』と言ったとする」
「えっ!?それって裸のまま艦内を歩き回れってことですか?僕はそんなことは言いませんよ」
「例え話だと言ったろ。もし、そう言われたら私はそうするしかない」
「えっ!?やっぱり、ノブヨさんにはそういう趣味が……」
「馬鹿!私に大勢の前で裸になる趣味は無い!裸になるのは好きな男の前だけだ!」
「それならどうして……」
「君が『ラッキーパーソン』だからだ。殺人と放火以外ならたいていのことは許される。例えば私を『性奴隷』にしてさんざんもてあそんだ後捨てたとしても君は何も責任は問われることはない」
「えっ!?『性奴隷』なんて、僕はそんなことは……」
「ああ、君はそんなことをしないと今では確信を持てる。だが、『ラッキーパーソン』になった最初の頃は分からなかった。だから、私は常に君の近くにいるようにしたんだ。この宇宙護衛艦『しなの』には女性乗組員も多いからな。君が手を出して彼女たちが被害にあわないようにだ」
「えっ!?じゃあ、ノブヨさんが僕のことを好きだというのは……」
「誤解するな。私が君のことを好きなことは今では本当だ」
「それじゃあ……」
艦内通話のアラームが鳴った。
ノブヨは音声のみの設定にして通話に出た。
「どうした?」
「副長です。航宙艦隊司令部より命令です。宇宙護衛艦『しなの』はただちに出港。アメリカ合衆国宇宙軍宇宙戦艦『ウィスコンシン』と合流し、ニュー・フロンティア星系へ向かえとのことです」
数時間後、宇宙護衛艦「しなの」は十二個のリングの近くにいた。
艦橋の艦長席にノブヨは座り、その隣にノリオが座っている。
宇宙戦艦「ウィスコンシン」が来るのを待っている。
「もともと、アメリカ宇宙軍とのニュー・フロンティア星系での合同演習は予定にあった。それが少し早まったな。さて、アメリカさんは何を企んでいるのか?」
「ノブヨさ……じゃなくて、小川艦長。アメリカは同盟国ですよね?」
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