第五十六話 カグヤ・シティ その11
五人の男たちは全員が拳銃をノブヨに向けた。
「ノリオ・大原。小川艦長の命が惜しければ、我々と一緒に来てもらおう」
五人のリーダーらしき男の言葉にノリオは動揺したが、ノブヨは余裕な態度だった。
「おい、おい、丸裸の私に対して男五人が銃を向けるのか?」
「小川艦長。あなたとは五人がかりでも素手で格闘戦をする勇気はない」
「じゃあ、私とノリオを銃で脅したまま、私の身体を楽しむ気はないか?ここには幸いベッドもあることだし」
ノブヨはグラビアアイドルのように豊満な胸を強調するポーズをした。
「残念だが、あなたの色仕掛けに応えることはできない。メスの虎とベッドをともにするようなものだ」
「私も残念だ。一対五でベッドで楽しみたかったのだが」
この時、ノリオがした行動を後から振り返った時、彼はこう言っている。
「ノブヨさんは銃がなければ男五人相手でも勝てるだろうから、銃を何とかしようと思った」
五人とも銃はずっとノブヨに向けている。
サングラスで分かりにくいが、その内四人がノブヨに視線を向けていて、一人だけがノリオに視線を向けている。
(銃は僕には向いてない。僕に視線を向けているのも一人だけだ。これなら何とかなるかな?)
ノリオは自分に視線を向けている一人に向けて体当たりをした。
体当たりをした後の記憶がノリオには無かった。
次にノリオが目を開けた時、目の前にはノブヨの顔があった。
「あっ!ノブヨさん!無事だったんですか!?」
「無茶をするなノリオ!いきなり奴らに体当たりをした時はびっくりしたぞ!」
「あれ?ここは?」
ノリオはベッドに横になっており、周囲を見回すとホテルの部屋ではなかった。
「カグヤ・シティ宇宙港に停泊している宇宙護衛艦『しなの』の艦長室だ。あのホテルにいたのでは新たな襲撃があるかもしれないので、安全なここに移動した」
「あの、僕たちを襲ったあの男たちはどうなったのですか?」
「私が全員を倒してカグヤ・シティ警察署に引き渡した。今のところ一般的な犯罪のあつかいだ。自衛隊に捜査権はないからな。あいつらの正体については今のところ不明だ」
「やっぱり、艦長は強いんですね。僕があの男に体当たりしたのは余計なことでしたか?」
「いや、ノリオが体当たりをしたことで『あれ』が起きたのだと思う」
「『あれ』って、何ですか?」
「ノリオは体当たりをした男に殴られて気を失ってしまったから分からないだろうが、あいつらの銃は全部不発だった」
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