第五十三話 カグヤ・シティ その8
「監視していたんですか?僕がハナちゃんと二人で遊んでいるところを」
「『監視』ではなく『保護』と言って欲しいな。君はあらゆる勢力に狙われている立場なんだ」
「『ラッキーパーソン』なんか成るものじゃないですね」
「それで、質問を繰り返すが、ノリオ。二枚目からはスクラッチくじをわざとはずしたのか?」
「はい、そうです。一枚目が当たったら二枚目から後が当たるのが何だか怖くなったので」
「ふーむ、一枚目の時は『当てよう』としたのか『はずそう』としたのか?」
「当てようともはずそうとも考えていませんでした。何も考えずにただくじを削っただけです」
「ふーむ、なるほど、ノリオ。私はちょっと考え事をしたい。考えがまとまるまで静かにしていてくれ」
「分かりました」
ノブヨは黙り込んだ。
ノリオはノブヨに話し掛けることはできず。
勝手に部屋を出ていけない雰囲気でもあった。
(まいったな。部屋にあるテレビはつけちゃいけない雰囲気だし、携帯端末はプールサイドに置いてきたから暇を潰す方法が無い)
ノリオはベッドに隣り合って座っているノブヨを見つめた。
(あらためて落ち着いて見ると、ノブヨさんは本当に美女だよな。サクラコさんやハナちゃんには無い『大人の色気』がいっぱいという感じだ)
ノリオはさらに考えた。
(もしも、将来、結婚するならノブヨさんみたいな人がいいのかな?彼女のような『大人の女』なら僕のことを導いてくれて……)
ノリオは首を激しく横に振った。
(おっと!危ない!危ない!ノブヨさんが僕との結婚の話を何度もしているのは、僕が『ラッキーパーソン』だからだろ!僕自身に好意を持っているわけじゃないんだ!)
「うん、やっぱり、実際にやってみて検証してみるしかないか」
ノブヨは考えがまとまったようだった。
「ノリオ。君のくじ運を試したい」
ノブヨは部屋にあったティッシュペーパーを小さく丸めた。
両手を握りこぶしにしてノリオに向かって突き出した。
「ノリオ。右手と左手どちらに丸めたティッシュペーパーが入っていると思う?」
「嫌です。やりたくありません。拒否します」
「ノリオ・大原二等宙士。これは命令だ」
「今はプライベートな時間ですよね?ノブヨさんに命令する権限はありません」
ノブヨは怒らずに笑顔になった。
「状況に流されるだけかと思っていたが、自分の意思を貫こうとするようになったな。それならこれはどうだ?」
ノブヨはビキニの胸に丸めたティッシュペーパーを入れた。
「ノリオ。私の右胸と左胸どちらだと思う?当てたら私の胸を揉み放題だ」
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