第五十一話 カグヤ・シティ その6
ノリオはスクラッチくじを十枚買うとハナと一緒に近くの喫茶店に入った。
ゆっくりとスクラッチくじを削るためである。
ノリオは十枚のスクラッチくじを削り終わった。
テーブルの上に並べたそれらを見てノリオとハナは数十秒間黙り込んでしまった。
ハナが先に口を開いた。
「意外と言うか、当然と言うべきか迷う結果だわ」
スクラッチくじは一枚が一等に当選していたが、他の九枚はハズレだった。
「一枚一等が当たったのは凄いけど、他の九枚がハズレだっのはどういうことなのかしら?ノリオお兄ちゃんの『ラッキーパーソン』としての『能力』が『リング』以外にも通じるなら全部当たりでもおかしくないわよね?」
「ハナちゃん。そんなに悩むことじゃないよ」
「ノリオお兄ちゃん。悩むことじゃないって、どういうこと?」
「僕も他の『ラッキーパーソン』と同じで『リング』以外に対しては『能力』が通用しないということだよ」
「でも、さっきはレア物のフィギュアが当たったし、今は一枚だけど一等が当たったわよ?」
「たまたまだよ。僕の『能力』が通用するのなら全部当たるはずでしょ?」
「それも、そうね」
「ハナちゃん。せっかく当たったんだから賞金でノブヨさんとサクラコさんと四人でパーっと使っちゃおう!」
その日の夜(カグヤ・シティでは地球の日本時間を採用している)、カグヤ・シティで一番の高級ホテルの最上階にノリオたちはいた。
ホテルの最上階は地下都市であるカグヤ・シティの地表に突き出すようになっており、透明なドームに覆われていて、地球を見ることができた。
専用のプールもありプールサイドにあるテーブルにはルームサービスで注文した料理が並べられていた。
「ふむ、さすがは月の最高級ホテルの料理だ。グルメでない私にも旨さは分かる。『しなの』で普段食べている物とは比べ物にならない」
「ノブヨおば様。せっかくノリオくんがご馳走してくれているんですから、『しなの』の食事と比べるのは失礼ですよ。ハナちゃん。こっちのケーキもおいしいわよ」
「はい!本当においしいです!やっぱり、スイーツは地球圏が一番です!」
ノブヨ、サクラコ、ハナの三人は食事を楽しんでいた。
「ところで……」
ノブヨはテーブルから離れた位置にいるノリオに目を向けた。
「なぜ、ノリオはそんな所にいるんだ?一緒に食べよう」
「あの……何でみなさん水着なんですか!?」
「プールがあるのだから当たり前だろう?君がこのプールのある部屋を取ったのは、私たちの水着姿が見たいからだろう?」
ニヤニヤ笑うノブヨにノリオは反論した。
「一番高い部屋を取ったら、たまたまプールがあったんですよ!」
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