第五十話 カグヤ・シティ その5
「はい、その通りです」
ハナはあっさりと認めた。
「正直に言えばノリオお兄ちゃんのお父さんの話はどうでもいいんです。ノリオお兄ちゃんの『くじ運』を試したかったから、このお店に誘ったんです」
「やっぱり、そうだったのか、でも、小川艦長が教えてくれたけど、僕以外の『ラッキーパーソン』の『リング』以外の『くじ運』は『普通』だそうだよ」
「ノリオお兄ちゃん。その事は知っています」
「だったら、何故、僕を試すようなことをしたの?」
「ノリオお兄ちゃんの『くじ運』はどうなのか試したかったからです」
「それなら、僕の『くじ運』は悪いよ。学校の席替えや学級委員の時のくじは『ハズレ』ばかりだったもの」
「ノリオお兄ちゃんの『今のくじ運』が知りたいんです。今、見事にレアなフィギュアを当てたましたよ。くじ運が良くなったということじゃないですか?」
「たまたま、この一回が当たっただけじゃないの?何度も繰り返して、僕が当たる確率を調べてみないと本当のことは分からないよ」
「でも、そんなにたくさんハンバーガーは食べられません。残したらもったいないですし」
「ここじゃなくて、宝くじ売り場に行って、すぐ当たりが分かるスクラッチくじを買えばいいんじゃないかな?」
ハナは少し驚いた表情になった。
「いいんですか?ノリオお兄ちゃん」
「いいんですか?って、何が?」
「だって、ノリオお兄ちゃんは、お父さんのことで宝くじには悪い印象を持っていると思っていたんです。それなのに自分から宝くじ売り場に行くと言い出すなんて……」
ノリオは苦笑した。
「まあ、宝くじに良い印象は持っていないけど、まったく関わりたくないというほどじゃないよ」
「それじゃあ、食べ終わったら。宝くじ売り場に行きましょう」
ハンバーガーを食べ終わると、ノリオたちは携帯端末で検索した近くにある宝くじ売り場に向かった。
西暦が終わり跳躍暦になっても、日本国では宝くじは国や自治体にとっての重要な収入源である。
携帯端末でネットで購入することもできるが、「あの売り場では高額当選が出る」と売り場で購入する人も多い。
スクラッチくじは「削るのが面白い」といまだに人気がある。
「あっ!ノリオお兄ちゃん。スクラッチくじを買うお金はあたしが出します!」
「いいよ。いいよ。年下の女の子に宝くじを買うお金を出してはもらえないよ。僕は航宙自衛隊の隊員で社会人なんだし」
「あたしは経費になりますから損はしませんよ」
「僕は宝くじを買う時は自分のお金でって決めているんだ」
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