第四十九話 カグヤ・シティ その4
「立ち話もなんだし、ちょうど、お昼時だから、どこかのお店に入ってお話しようか。ハナちゃんは何が食べたい?」
ハナは携帯端末で近くの店を検索した。
「ノリオお兄ちゃん。あそこの店がいいです」
ハナが指差したのは、全人類が地球にのみ住んでた頃からある有名なハンバーガーチェーン店で、現在では人類が住む十三の星系すべてに展開している。
「えっ!?あのハンバーガーショップはどこの星にもあるよね?せっかく月に来たんだから月にしかない店の方が……」
「あのお店がいいんです!行きましょう!ノリオお兄ちゃん!」
「う、うん、わかったよ」
ハナは少し強引にノリオを店に誘った。
「月面戦隊カグヤレンジャーセットを二つください」
ハナが注文したハンバーガーセットを受けとると二人はテーブルに向かった。
ハンバーガーセットには手のひらサイズのカプセルが一つ付いていた。
ハナは自分のカプセルを開けた。
カプセルの中身は小さなフィギュアだった。
フィギュアは黒い全身タイツのような物を着た人形だった。
「あーっ!残念!下っ端の戦闘員だったわ!ノリオお兄ちゃん。そっちのカプセルを開けてみて」
「僕のカプセルならハナちゃんにあげるよ」
「それは駄目!ノリオお兄ちゃんが開けることに意味があるの!開けてみて!」
ノリオはカプセルを開けた。
中身は水着のような物を着た女性のフィギュアだった。
「ああっ!凄いレア物だわ!ノリオお兄ちゃん!」
ハナは興奮して女性型のフィギュアを手に取った。
「月面戦隊カグヤレンジャーの初期に出ていた女幹部のフィギュアだわ!出演して二ヶ月でカグヤレンジャーに倒されてしまったから、あまり出番はなかったのだけど、美人さんだったから、今でも一部のファンには熱烈な人気があるの」
「でも、二ヶ月で倒されるなんてずいぶん早いね?」
「一般には知られていない裏話では、女幹部役の女優さんがスタッフと不倫をしていて、それが表沙汰になる前に女幹部のキャラクターその物をストーリーから消したの」
「ハナちゃんは何で裏話を知っているの?」
「今は、あたしたちのグループのスタッフをしているの」
ノリオは少し大きく息を吸って真剣な目をハナに向けた。
「話は変わるけど、ハナちゃんがこの店に僕を誘ったのはカグヤレンジャーのファンだから?」
「うん、オマケ付きセットはカグヤ・シティ限定だから。どうしても来たかったの」
「本当は別の目的があるんじゃないの?」
「本当の目的?何それ?ノリオお兄ちゃん」
「僕の『ラッキーパーソン』としての『リング』以外の『くじ運』を試してみたかったんじゃないの?」
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