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第四十話 天華人民帝国 その10

 人民解放軍のあるエリート士官が「天華人民帝国」に所属する女性アイドルにした情報収集についての実例がある。


 そのエリート士官は二十歳代の男性であった。「天華人民帝国」の「運営」についての情報を手に入れれば大きな功績となり、中国本土に戻れば出世街道を進めるのは確実であった。


 まず、エリート士官は「天華人民帝国」に所属する女性アイドルに近づくのは早々に諦めた。


 ガードが固く個人的に接触するのは不可能だからだ。


 それで発想の転換で「天華人民帝国」に所属する前の女の子に接触することにしたのだった。


 一般の女の子が「天華人民帝国」に入団するには二つの方法がある。


 スカウトの目に留まるか、入団テストで歌やダンスの審査に合格するかだ。


 入団テストに合格するのは難関だった。


 入団希望者は自費で歌やダンスを養成するスクールに通わなければならなかった。


 家が裕福でなければ、スクールの授業料を稼ぐためにバイトに明け暮れている女の子も珍しくはなかった。


 そこでエリート士官はそのような女の子たちに接触し、授業料を肩代わりすることを申し出たのだ。


 もちろん、エリート士官は自分の身元を明らかにはしなかった。


 直接、女の子たちと接触するようなことはせず。代理人として「親切な老婦人」が支援をしてくれているということにした。


 そうやって支援した女の子の中には入団テストに合格して者も出た。


 後は、彼女たちがグループ中で人気が出て「運営」の直接指導を受けられるような立場になれば、「運営」の正体に迫ることができるはずであった。


 彼女たちは才能があったようで順調に人気が上昇し、トップグループに入るようになった。


 エリート士官は目的の達成は間違いなしと確信していた。


 それが、間違いだと分かったのは、エリート士官が休日に街に外出したある日のことだった。


 エリート士官は一人で外出して特に目的もなく街をブラブラと歩いていた。


 そうしたら女性から逆ナンされたのだった。


 現地の一般女性との交際を禁止されているエリート士官は最初は断ろうとした。


 だが、自分が天華人民帝国に入団を支援して現在はトップグループにいる女性だと気づいたのだった。


 エリート士官は突然のことに混乱した。


 彼女は軽く変装していたので幸い周囲の人たちは気づいてはいないようだった。


 だが、天華人民帝国は恋愛禁止であり、逆ナンしたとばれたら彼女は追放であった。


 せっかくトップグループにいる彼女を追放されるわけにはいかない。


 エリート士官はとりあえず逆ナンを受け入れることにした。

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