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第三十八話 天華人民帝国 その8

 C11惑星に派遣された人民解放軍のエリート士官が全員男性なのは、次のような理由がある。


 C11惑星の大気圏に駐留しているのは、人民解放軍陸軍である。


 大気圏の外のC1星系の宇宙空間は人民解放軍宇宙軍の管轄になっている。


 居住惑星は陸軍の管轄、星系の宇宙空間は宇宙軍の管轄としている国は多い。


 ちなみに、日本の場合は、惑星新大江戸の大気圏内も新大江戸星系の宇宙空間も航宙自衛隊の管轄になっている。


 陸上自衛隊は、台風・地震などの自然災害が頻繁に発生する日本列島において災害出動に対応した組織になっており、ほとんど自然災害が起きない惑星新大江戸に陸上自衛隊を駐留させることを日本政府が見送ったのだった。


 海上自衛隊・航空自衛隊については、「リング」による恒星間移民・貿易が盛んになってからは、地球上の先進国同士による武力紛争は発生していないが、歴史問題・領土問題などで日本列島周辺の諸国との緊張状態は継続しており、抑止力としての海上・航空自衛隊を日本列島から減らすことになるのを日本政府は嫌ったため海上・航空自衛隊も惑星新大江戸に派遣することを見送った。


 日本政府は新たに創設した航宙自衛隊の管轄を新大江戸星系全体としたのだった。


 近年は、現地で創設された軌道警備奉行所に警備・救難業務の一部を移管している。


 話を戻すと、中国人民解放軍が陸軍をC11惑星の大気圏内を管轄としたのは、植民当初から現地民が暴動や独立運動をすることに備えての治安維持軍を必要としたため、その経験が豊富な陸軍をC11惑星に駐留させることにしたからである。


 現在、陸軍には女性エリート士官はほとんどいない。


 西暦の二十世紀後半ごろから始まった男女同権の思想の浸透により、どこの国の軍隊でも女性が入隊し昇進することは当たり前になった。


 人民解放軍でもそれは同じだった。


 しかし、もともと男社会であった軍隊ではそれを嫌う者も多かった。


 だが、軍隊では志願者を集めることに苦労しており、人手不足により、女性の士官や将官がいなければ組織が維持できなかった。


 そんな中、画期的な兵器が開発された。


 人工知能によるロボット歩兵が比較的安い価格で量産が可能になったのである。


 危険な歩兵の任務のほとんどをロボット歩兵が代わりにすることになり、人間の士官がロボット歩兵部隊を比較的安全な場所から指揮するようになった。


 先進国においては、陸軍の人手不足は解消されたのであった。


 これにより、陸軍で女性の入隊を忌避する傾向が発生した。

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