第三十七話 天華人民帝国 その7
「天華人民帝国が、いつ独立宣言をだすのか?」
誰もが注目していたが、中国共産党上層部は特に注目していた。
独立宣言を出したらC11惑星に駐留する人民解放軍で武力鎮圧する予定であった。
駐留軍の多数を占めるのは、人工知能によるロボット歩兵と同じく人工知能による自動戦闘戦車であった。
それを中国本土から派遣されたエリート士官が指揮をするようになっていた。
天華人民帝国を武力鎮圧したら国際的な非難をあびることは確実であったが、中国共産党上層部はそれは覚悟していた。
天華人民帝国の独立を許せば、それに影響されて地球の中国本土の少数民族が住む地域も独立しかねないからだ。
だが、中国共産党上層部にとって予想外の事態が起きた。
中国本土からC11惑星に派遣されたエリート士官で現地での除隊を申し出る者が多数出たのだ。
派遣された士官は数年C11惑星で勤務した後、勤務評価に応じて昇進して中国本土勤務に戻るのが通常のコースであった。
そのコースからはずれる士官が出たのだ。
コースからはずれる士官は毎回数人は出るので、最初は中国共産党上層部は不思議には思わなかった。
だが、ほとんどの士官がコースからはずれたので、さすがに不審に思った。
調査してみると、現地除隊した全員が現地の民間警備会社に再就職していたのだ。
その民間警備会社は「天華人民帝国」に所属するアイドルの警備を請け負っている会社であった。
なぜ、そうなったかと言うと、人民解放軍のエリート士官たちは全員が男性であり古典的なハニートラップに引っ掛かり、機密情報を漏らしてしまい。中国本土に帰ることができなくなっていたのだ。
エリート士官が古典的なハニートラップに引っ掛かってしまったのには理由がある。
中国共産党上層部はエリート士官に情報漏洩をおそれて、現地の一般女性との交際を禁じてた。
女性従業員がいる酒場などに通うことも制限されていた。
こういう場合は、他国の軍隊や企業では単身赴任者のために欲望を発散するため仮想現実の使用時間制限を緩和することで対応していた。
しかし、人民解放軍では仮想現実の使用について表向きは制限は無いが、裏では上層部が使用時間・使用目的についてチェックしており、人事評価の材料にしているという噂があった。
この噂の真偽は現在でも不明だが、このような理由でC11惑星駐留の人民解放軍のエリート士官たちは慢性的に欲求不満であった。
だが、合法的にエリート士官が現地の女性と付き合う方法があった。
それは「情報収集のため」という名目で「天華人民帝国」に所属する女性アイドルと付き合うことであった。
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