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第三十四話 天華人民帝国 その4

 アイドルグループ「天華人民帝国」の地球でのファーストライブの会場は、アメリカ合衆国となった。


 予定では、アメリカの後はヨーロッパ諸国・日本を回り、最後に中国でライブをすることになっている。


 跳躍暦百五十年では、仮想現実により自宅にいたままで、スポーツの試合や歌手のライブなどを実際に会場にいるのとほとんど同じように体験できるようになっていた。


 だが、「現実に体験した」ということが一種の社会的ステータスとなっている。


 会場まで何時間もかけて移動し、何時間も行列に並び、満員の観客席に座るということがであるのは、「時間に余裕のある人間」ということで、SNSなどで他人に対して自慢できることなのである。


 余談ではあるが、「時間に余裕のある人間」を「ただのニートじゃないか?」と疑う人間は跳躍暦百五十年にはいない。


 西暦の二十一世紀初頭に地球の先進国で多数発生したニートは跳躍暦百五十年には存在していない。


 リングにより地球人類が開拓した十二個の星系には、まだまだ未開拓の土地があり人類社会は慢性的な人手不足だからである。


 話を戻すと、アイドルグループ「天華人民共和国」のアメリカでのコンサートは成功した。


 普段はメジャーリーグやアメリカンフットボールが開催される競技場を超満員にしたのだった。


 特にコンサートの最後には、アメリカ人の観客が、グループのリーダーに向けて「皇帝陛下!万歳!」と唱和したりしたのだ。


 西暦二十世紀にアメリカで第一作が制作され、跳躍暦百五十年なっても続編やリメイクが制作されている有名な星々での戦争を題材とした映画にあるように、アメリカでは一般的には「帝国・皇帝」イコール「悪」といったイメージが強いのだが、これによりアメリカ人の間でも認識がだいぶ変わり、最新アメリカで制作される映画やドラマでは必ずしも帝国・皇帝を「悪」という描写をしないようになっている。


 ヨーロッパ諸国でも大人気で、日本でも同じだった。


 日本では、西暦二十一世紀に制作され著作権が切れている有名な日本のアニメ・ゲームのキャラクターのコスプレをして人気を博した。


 最後の会場は、彼女たちにとっての本国である中華人民共和国の北京であった。


 中国共産党上層部は地球に来た彼女たちを常に警戒していた。


 しかし、彼女たちはライブの最中のトークなどでも政治的な発言は一切せず。


 SNSで発信するプライベートでも地球の観光地やグルメを楽しむ姿を公開するだけであった。


 そして、北京のオリンピックでも使われた競技場で、天華人民帝国の地球での最後のライブが開催された。

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