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第三十一話 天華人民帝国 その1

 ノリオの脳に記憶促進装置で刷り込まれた知識が引き出された。




 天華人民帝国。


 その国名から連想されるように地球の中華人民共和国が開拓を主導した天華星系にある国家である。


 天華星系には地球人類が居住可能な惑星が一つあり、その惑星「天京」にはユーラシア大陸に匹敵する面積の大陸が二つある。


 中国が最初に開拓を始めた時は、この星系の名前は天華ではなく、国際連合の分類番号である「C1星系」のままであり、惑星名も同じく分類番号である「C11惑星」のままであった。


 中国政府が無味乾燥な分類番号のままにした理由は、固有名詞を付けると地球の中国本土からの移民が新たなアイデンティティを得て、本土とは 「違う」と意識して「独立」などと住民が考えないようにするためである。


 それが現在は天華人民帝国となっているのは理由がある。


 前述したように、惑星にはユーラシア大陸に匹敵する面積の大陸が二つあり、北半球にあるのが北大陸、南半球にあるのが南大陸と名付けられた。


 南大陸には広大な湖や大河があり水資源に恵まれているが、北大陸はほとんどが乾燥した土地で水資源に乏しかった。


 地球の中国本土からの移民による開拓は当然南大陸から進められた。


 南大陸の主な産業は農業であった。


 地球の中国本土は急速な工業化による大気・水質汚染により、広大な農地が使用不能になったため新たな食糧生産地として期待されていた。


 中国本土から南大陸への移民は政治思想的に厳重なチェックが行われ、本国の方針に従順な者だけが移民の資格を得ることができた。


 南大陸は中国本土から派遣された中国共産党員のエリートにより統治され、移民には政治的な自由は無かった。


 しかし、西暦の二十一世紀頃の中国本土の経済発展から取り残された地域から選別された移民は、政治的な自由よりも経済的な豊かさを求めた。


 C11惑星を統治した中国共産党員のエリートたちは民主的ではなかったが優秀であり現地を巧みに統治したため、南大陸に移民した住民たちは不満をほとんど持つことはなかった。


 それと対照的なのが北大陸である。


 そこへの移民は中国本土での少数民族・政治的な不穏分子が主であった。


 水資源に乏しい北大陸では海水淡水化施設は必須であり、施設は中国共産党の管理下にあった。


 そこに少数民族・不穏分子を半ば強制的に移民させることで、中国本土における反抗を事前に防ごうとしたのだ。


 中国政府は他の国連常任理事国からの批判をかわすために、北大陸には例外として地球の各国からの難民も移民として受け入れた。


 北大陸を意図的に多民族・多文化地域とすることで、北大陸の住民が団結して反抗しないようにしたのだった。


 しかし、それが天華人民帝国の建国につながるとは当時は誰も思わなかった。

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