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第三話 個室

新大江戸星系への跳躍に一回で成功した宇宙護衛艦「しなの」は、くぐり抜けたリングを背後にして新大江戸星系を航行した。


途中、「しなの」とは反対に太陽系に向かう民間貨物宇宙船「第三しんとねがわ丸」とすれ違ったので、その船に「伝言」を頼んだ。


リングは電波などの通信波を一切通さないので、宇宙船同士で「伝言」を頼むことは普通に行われている。


新大江戸星系にあるリングは一つだけで、跳躍する先は太陽系だけなので、「第三しんとねがわ丸」は太陽系に到着したら、地球の月のカグヤ・シティにある航宙自衛隊航宙艦隊司令部に「しなの無事一回の跳躍で新大江戸星系に到着」との通信を送ってくれるだろう。






それから数時間後、ノリオ・大原二等宙士は、宇宙護衛艦「しなの」の艦内にある自室に戻った。


一番下っ端の二等宙士である彼にも個室が与えられている。


地球上の海を航行する軍艦では今でも水兵には二段ベッド・三段ベッドが当たり前で、個室を与えられるのは艦長ぐらいである。


しかし、長期航宙する宇宙船ではストレスを軽減するため乗組員全員が個室となっている。


もちろん、水上船より宇宙船の方がはるかに大きく船内のスペースに余裕があるという理由もある。(宇宙護衛艦『しなの』は全長約三千メートル)


もちろん、階級・役職によって個室の設備に差はあり、艦長室は一流ホテルのスイーツ並みだが、ノリオの個室は安アパート並みである。


ノリオはベッドに倒れ込んだ。


ついさっきまでノリオは、艦内食堂で行われていたパーティーと言うか、宴会と言うか、どんちゃん騒ぎに「主役」として巻き込まれていた。


一回目で「跳躍」に成功したことを祝う席だった。


リングを選択する時、一回目には法則性は発見されていないが、唯一発見されている法則として、リングを選んで通過するのを十二回すれば、十二回目には目的地とした星系に必ず到着するのだ。


しかし、「跳躍」を一回するごとにリングをくぐる宇宙船の「順番待ち」をしなければならないので、十二回目の跳躍ができるまで、平均して一週間はかかる。


十二回連続の「跳躍」が許可されるのは、緊急の重要物資・重要人物の輸送の時だけである。


一週間は航行時間が短縮できたので全乗組員は喜び、便乗している日本国植民省の役人も喜んだので、「祝い酒」をノリオは飲まされたのだった。


十八歳で成人なので飲酒は法律的に問題は無く、航宙自衛隊ではストレス軽減のため勤務時間外であれば飲酒は許されているが、ノリオはまだ酒には慣れなかった。


ノリオはポケットから携帯端末を取り出し、画像を見た。


それはパーティーの席で、小川艦長から転送された艦長の親戚の十七歳の少女の画像であった。

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