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第二十九話 サクラコ その6

 ノリオとサクラコは人力車に乗って新大江戸市の城下町を移動していた。


 人力車を引いているのは人型アンドロイドである。


 地球の都市を走っている自動運転のタクシーのように携帯端末で呼べば、近くを走っている人力車が乗客の所に来るようになっている。


 駕籠も人型アンドロイドが担いでおり、利用方法は同じである。


「あの……サクラコさん、僕に引っ付き過ぎじゃないですか?」


 二人乗りの人力車の座席でノリオは左側に座るサクラコに顔を向けた。


 サクラコはノリオの左腕に両腕を絡ませて密着している。


「こうするのは当たり前のことじゃない?私たちはお付き合いしているんだから?ノリオくんが私と付き合うことを決めたんだよ?」


「た、確かに、サクラコさんとお付き合いするかどうかを小川艦長に相談したら『付き合った方がいい』と言われたので、そうしました」


 サクラコは頬を膨らませてノリオを睨み付けた。


(ああ、サクラコさんは少し怒った顔も可愛いなあ!小川艦長に怒られると美人なだけに怖いんだけど。二人ともよく似た顔立ちしているのに、この違いは何だろう?)


 ノリオが内心でそんなことを考えていることは、もちろん知らずにサクラコはあきれたような声を出した。


「あーっ!少しがっかりだなあ!私たち二人の問題なのにノブヨおば様に相談するなんて!それとも、ノリオくんは私とノブヨおば様を二股をかけているのかな?」


「ば、馬鹿なことを言わないでください!サクラコさん!小川艦長の正確な年齢は僕は知りませんが、四十歳は過ぎているはずです!十八歳の僕とは親子ぐらい歳が離れていますよ!」


「西暦の二十一世紀はじめ頃ならともかく、今では地球でも新大江戸でも、そのくらいの歳の差のカップルは珍しくないよ。それに昔なら四十歳過ぎは高齢出産で色々と問題があったけど、今は医学の進歩で問題なく元気な赤ちゃんが生めるんだよ?」


「あ、赤ちゃんだなんて!第一、小川艦長は僕みたいなの好みのタイプじゃないでしょ!相手にされませんよ!」


 サクラコは悪戯っぽい表情になった。


「分からないわよ?それじゃあ、ノリオくんは、どんな男の人がノブヨおば様のタイプだと思うの?」


「そ、それは……イケメンで、エリートみたいな人で……」


「そう!みんな、ノブヨおば様のイメージからそう思うわ。でも、親戚のノブヨおば様と同世代か上の人たちの話だとイケメン・エリートからの交際の申し込みはみんな断っているのよ」


「でも、僕みたいのがタイプなのはありえないですよ」


「それなら、ご本人に聞いてみましょう?どうなの?ノブヨおば様」


 サクラコは人力車を引く人型アンドロイドに話し掛けた。

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