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第二十三話 説明 その6

「そして、その女子生徒が『不良品』を触った途端、レバーの部分がはずれたんです」


「何だと!?今まで、どんな手段を使っても分解も破壊もできなかったA式推進機が!?」


「はい、私も最初に聞いた時は団長のように驚きました」


「吉宗」船長は詳細を説明した。


はずれたレバーの部分は「遠隔操縦装置」であるらしく、レバーを持つその女子生徒が本体部分を操縦できた。


「不良品」あらため「A式推進機改」と名づけられた本体部分を試作品である未登録の新型小型宇宙艇に搭載したところ物理的にありえない機動をした。


「しかし、遠隔操縦できるのは、その女子生徒だけで、彼女以外では誰がレバーを持っても操縦できませんしでた。彼女には警備船『吉宗』に乗ってもらって小型宇宙艇の遠隔操縦のさまざまな実験をしていたら、こういうことになった訳です」


「それで、船長、何故、あの小型宇宙艇は、この『しなの』と衝突するような機動をしたのだ?艦を預かる艦長として危険な行為をしたその女子生徒を見過ごすわけにはいかない」


小川艦長が初めて積極的に「吉宗」船長に話し掛けた。


「ああ、女子生徒には一切責任はありません。話を早くするために『操縦』と言いましたが、正確には彼女は操縦していません」


「どういうことなんだ?」


「A式推進機改には『犬並みの知能』があるようで、レバーを最初にはずした人間を言わば『飼い主』として認識するようなんです」


「何だと!?A式推進機改には人工知能がついているのか!?」


「分解もX線での検査もできませんから確認はできませんが、おそらく、そうでしょう。しかし、ある意味、我々地球人類が開発した物より高性能です。気まぐれに『飼い主』の命令を聞かなかったり、どこまでも走って行こうとしたりしますからね。『しなの』と衝突しそうになったのもA式推進機改としては『じゃれついた』だけのようです」


「『じゃれついただけ』だと!?あのような危険な状況を!?」


「でも、結局は衝突しなかったでしょ?犬が人の周りをぐるぐる回ったりするのと同じようなことです。さて、小川艦長、ここで、私の方から重要な話をしたいのですが」


「なんでしょうか?」


「女子生徒とA式推進機改を航宙自衛隊の方で保護していただきたいのです」




女子生徒が「吉宗」から「しなの」に移り、小川艦長に会うといきなり頭を下げた。


「本当に申し訳ありません!ウチのカイくんが、ご迷惑をお掛けしてしまい!」


「カイくん?A式推進機改のことか?」


「A式推進機改だから『カイくん』、可愛い名前でしょ?ノブヨおば様」


天真爛漫な表情と声の女子生徒は、小川艦長の親戚であるサクラコ・小川であった。

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