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第二十二話 説明 その5

「吉宗」船長の説明は続いた。


「早速『不良品』は我が軌道警備奉行所の小惑星基地に分解して調べるために運び込み……」


「ちょっと、待ってくれ。船長、そもそも『不良品』が発見されたのはいつのことなのだ?」


植民省の役人である定期調査団団長の質問に船長は答えた。


「ああ、そう言えば、まだ話していませんでしたね。一年ほど前です」


「一年だと!?一年も報告していなかったのか!?重大な報告義務違反だ!船長!」


詰め寄る団長に対して、船長はあっさりとした反応だった。


「団長、違反ではありませんよ。国際連合に報告義務があるのは『新たに発見された異星人の置き土産』ですよね?」


「その通りだ。だから報告義務違反だと……」


「A式推進機については過去に報告してあります。それの動かない『不良品』が出たとしても国連に報告する義務はありません。そうは想いませんか?小川艦長」


「吉宗」船長が小川艦長に話を振った。


二人の論争に巻き込まれたくなかった小川艦長は内心で迷惑に思ったが、それは表に出さずに応じた。


「過去の事例から判断すると報告義務違反にはならないと思われます。具体的な例は五十年ほど前にニュー・フロンティア星系で起こった件で……」


小川艦長は壁のディスプレイにデータを表示した。


簡単に説明すると、ニュー・フロンティア星系での「異星人の置き土産」の無人工場で、未知の製造物が生産されたが、外見が既知の物と同じだったため、一年以上未知の物だと気づかず。国連への報告が遅れたが違反とは見なされなかった。


それを見た団長は不満に思いながらも納得した顔になった。


「船長、報告義務違反かどうかの判断については、とりあえず保留とします」


「それはどうもありがとうございます」


「ですが、『A式推進機改』 が新たに発見された物に間違いないですよね?」


「はい、それについても説明します。『不良品』は小惑星基地で一年ほど研究されましたが、分解もX線で中身を見ることもできず。レバーを動かしても起動せず。文字通りの『不良品』かもしれないと思われて、ほとんど研究は諦められていました。ところが……」


船長は意味深くいったん言葉を切った。


「……数日前のことです。小惑星基地に惑星新大江戸の高校の生徒さんたちが社会見学の授業のために訪れたのですが、研究員の一人が生徒さんの一人に『不良品』を見せたのです」


「何だと!?その研究員はどうして、そんなことをしたのだ!?」


「その研究員は若い男性で、相手は女子生徒で、気を引こうとしたようです」

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