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第二十一話 説明 その4

無人工場から搬出されたA式推進機は、地球人類社会全体に販売されている。


A式推進機を超える性能の推進機を地球人類はまだ開発できないため、地球人類のほとんどすべての宇宙船はA式推進機を搭載している。


日本はA式推進機の販売により莫大な利益を得ている。


得られた利益の取り分は、日本本国が三割、新大江戸が七割となっている。


一見すると新大江戸の方が利益が多いように見えるが、これには絡繰りがある。


新大江戸は得た利益のほとんどを日本本国からの農業・漁業用ロボットの購入に回さなければならないからだ。


結果的に、A式推進機の利益は日本本国が独占しているのと同じ状態にある。


そのことに新大江戸の上層部の知的エリートは不満を持っているが、大多数の一般住民は不満に思っていない。


農業・漁業から得られる利益だけでも充分豊かだからである。


……というようなことをノリオが思い出している間も、植民省の役人と「吉宗」の船長の会話は続いていた。


「先ほどからの船長からの説明を繰り返させてもらいますと、この『しなの』に衝突しそうになった無人小型宇宙艇には新発見のA式推進機……、『A式推進機改』と呼んでいる物が搭載されていたそうですな?新発見の『異星人の置き土産』について報告していないのは、重大な違法行為ですよ?」


植民省の役人である調査団長は、西暦の二十世紀に製作された刑事ドラマの容疑者を取り調べる刑事のように船長を威圧していた。


それに対する船長の反応は、茶飲み話をしているように穏やかであった。


「いえ、最初は『A式推進機改』は『不良品』だと思われていたのです」


「不良品?どういうことですか?船長」


「これは現代社会の常識ですが、A式推進機について我々地球人類は仕組みはまったく分かっていません。あまりの頑丈さに分解することはできず。X線でも中身は映りません。A式推進機の外側にあるレバーを動かすという使用方法が分かっているだけなのです」


「それは一般常識だな。船長」


「ですが、あの『A式推進機改』は無人工場から搬出されて、レバーを動かしたところ作動しなかったことから『不良品』だと思われたのです」


「だが、あの小型無人宇宙艇は物理法則を無視した動きをしていたではないか?」


「少し複雑な話になるので最後まで聞いてください。無人工場から搬出された製品で、『不良品』が出たのは初めてのことでしたが、むしろ、これは『絶好の機会』だと思われました。『不良品』なら分解が可能で中身を見ることができて、A式推進機の仕組みを知ることができるかもしれないと思われたからです」

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