第十九話 説明 その2
ノリオは高校生の時に授業で習い、航宙自衛隊に入隊してから記憶促進装置で詳細を記憶した新大江戸星系の開拓の歴史を思い出していた。
日本国植民省により、新大江戸星系の唯一の可住惑星である惑星「新大江戸」の初期に定められた開拓方針は「食糧生産惑星」にすることだった。
地球の日本列島の日本本国では、西暦の二十世紀からの食料自給率の低下が止まらず。新大江戸の開拓で抜本的な解決をしようとしたのであった。
惑星「新大江戸」は地球とほぼ同じ環境で、惑星改造の必要はまったくなく、地球人類はそのままで住むことが可能であった。
それどころか、地上には地球の「米」に似た原生植物が生い茂り、海中には地球では絶滅危惧種に指定された「鯨」「鮪」「鰻」似た生物が群をなして泳いでいた。
生物学者たちは異なる惑星に地球そっくりの植物・動物がいることの理由に頭を悩ませ、現在でも研究は続いているが結論は出ていない。
しかし、日本人の大多数にとっては生物学者たちの悩みなど気にはしていなかった。
新大江戸産の食糧は地球人類が食べても体に害は無く、味は地球産の物よりも良いのが分かったからだ。
日本本土の農業関係者は遥かに広い農地が得られるので積極的に「新大江戸」に移住し、遥かに広い漁場が得られる漁業関係者も同じであった。
意外なことに「新大江戸」では畜産業は発達しなかった。
「新大江戸鯨」の肉は地球の牛肉より遥かに美味であり、天然物なので飼料費などのコストはゼロなので安価であった。
新大江戸でも日本本土でも単に「食肉」と言うと「新大江戸鯨」のことを指すようになった。
「新大江戸米」も日本本土とは比べ物にならない広大な土地で低コストで生産されるようになり、地球の日本本土では水田はほとんど消滅している。
新大江戸は日本国の特別県であり、日本の一部のあつかいなので、日本全体の食料自給率は二百パーセントを超えていて、地球上の外国や他の植民星系に輸出までしている。
ただし、日本本土では食糧自給率は十パーセント以下に低下している。
日本本土にある農地は、新鮮な野菜や果物を栽培する畑や果樹園がほとんどになったからである。
日本本土と新大江戸を含んだ日本全体の産業構造は、跳躍暦百五十年現在次のようになっている。
日本列島では歴史的な街並みや景色など文化と自然環境の保護が優先され、大規模な工場は地球の衛星軌道上の工業コロニーにある。
前述したように、主食である米と食肉は新大江戸に完全に依存している。
それが新たな問題を生み出してもいる。
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