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第十八話 説明 その1

大型宇宙警備船「吉宗」は全長千メートル、大江戸星系軌道警備奉行所が保有する宇宙警備船の中では最大であり、軌道警備奉行所を象徴する宇宙警備船となっている。


しかし、全長三千メートルの日本国航宙自衛隊宇宙護衛艦「しなの」と接舷していると中型宇宙船にしか見えない。


「しなの」の応接室には四人の人間がいた。


小川艦長、ノリオ、植民省の役人、そして「吉宗」の船長であった。


「……説明は以上です」


「吉宗」の船長は説明を終えた。


(ふーん、なるほど。そうだったのか)


ノリオは船長の説明にあっさりと納得した。


船長は五十歳代の男性で見た目も五十歳代で書道教室の先生のような落ち着いた雰囲気をしている。


跳躍暦百五十年現在では手間と費用を掛ければ、実年齢が五十歳代でも二十歳代の見た目にできるが、社会的地位の高い人間は貫禄を付けるために外見をあえて実年齢のままにする人が多い。


船長もその一人のようだ。


「船長、そんな説明で植民省が納得すると、お思いで?」


船長に反論したのは植民省の役人である。


「しなの」に便乗して、大江戸星系に向かう定期調査団の団長であった。


見た目は三十歳代の男性で実年齢も三十歳代の男性だ。


黒いスーツを着て黒縁の眼鏡を掛けている。


西暦の二十世紀から続く日本の「役人」「官僚」という言葉から連想されるイメージ通りの外見をしている。


跳躍暦百五十年現在では「近眼」も「老眼」も、ちょっとした処置で治療可能であり、視力矯正用の眼鏡は絶滅している。


団長が掛けている古くさいデザインの眼鏡は「ファッション」ということになるが、自分から「官僚」というイメージを強調しているかもしれないとノリオは思った。


「団長、私は軌道警備奉行所の人間として事実を説明しているだけです」


「それが事実ならば、我が植民省は今回の調査は厳しくしなければなりませんな」


ノリオは団長と船長の二人の間の会話にはもちろん入れないし、小川艦長も口を挟む様子は無かった。


ノリオは記憶促進装置で脳に刻まれた日本国植民省と大江戸星系についての歴史を思い出した。


植民省は日本の省庁では最も新しく設立された省庁で、跳躍暦になってから設立された。


古くは明治時代にまで設立がさかのぼる他の省庁からはいまだに「新参者」呼ばわりされることもある。


その名の通り日本の宇宙植民については絶大な権限を持っており、日本主導で植民した大江戸星系の初期の調査・開拓・移民には植民省が存在しなければ不可能だったと言われている。


大江戸星系が「生まれたばかりの赤ん坊」、植民省が「育ての親」と開拓初期には言われ、それは事実でもあった。


だが、大江戸星系を開拓し初めて約百五十年、植民省と大江戸星系の関係は変わってきている。

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