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第十二話 高速飛翔体 その1

「高速飛翔体、所属を表す識別信号を出していません。所属不明です。こちらからの通信にも応答しません。進路を変更する様子もありません。このままでは当艦と交差します」


宇宙護衛艦「しなの」の艦橋で、小川艦長は副長であるツグオ・細川二等宙佐から直接報告を受けた。


「以後は、所属不明の高速飛翔体を『標的アルファ』と呼称する。当艦は進路このまま」


「艦長、標的アルファを回避する軌道に変更しませんか?無人宇宙船による自爆テロの可能性があります」


「副長、自爆テロだとしても回避するにはまだ余裕がある。それに標的アルファがすべての通信が不能になって、推進機が暴走している遭難宇宙船の可能性もゼロではない。判断はぎりぎりまで待つ」


「了解しました」


観測長が標的アルファの観測・分析結果を報告した。


それによると大きさは一人乗りの小型宇宙艇程度、「しなの」のコンピューターの宇宙船のどのデータとも一致しないとのことであった。


「艦長、未登録の違法宇宙船である可能性があります。宇宙における国際法により未登録宇宙船が他の宇宙船に識別信号無し、通信に無回答で接近する場合は『自爆テロの可能性が高い』とされて、こちらから攻撃して破壊しても合法です」


「副長、新大江戸は日本本国に自爆テロを仕掛けるほど関係は悪くない」


「しかし、彼の件があります」


副長は艦橋にいるノリオをチラリと見て、小川艦長に話を続けた。


「ラッキーパーソンを日本本国が手に入れるぐらいなら『しなの』ごと破壊してしまえと考える者が新大江戸にいないとは限りません」


「副長は悲観的だな」


「艦長が楽観的過ぎるんです」


小川艦長と細川副長のやり取りを知れない者が見れば、「二人の関係は悪い」と判断するだろう。


小川艦長が「美女」なのに大して、細川副長が航宙自衛隊隊員としては小柄な方で顔が「小狡い小役人」を連想させる見た目の男なので、二人が対立関係にあるかのように見えもする。


ノリオは「しなの」の乗組員になった当初そう思った。


しかし、「しなの」で勤務する内にノリオはこう思うようになった。


小川艦長が「楽観的な態度」、細川副長が「悲観的な態度」を敢えて演じているのではないか?


正反対の判断を口に出すことで「二人とも間違う」ということを避けているのではないか?


ノリオには真相は分からない。


本人たちには怖くて聞けないし、古参の乗組員にはまだ親しい人はいないから聞けないからだ。


「艦長!標的アルファ、増速しました!確実に本艦と衝突する軌道に乗りました!」


観測長が悲鳴を上げるように報告した。

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