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第百三話 ニュー・フロンティアでの暴動 その10

 長老議員たちは、ニュー・フロンティア星系政府に「惑星調査員監査局」を設立した。


 局長などの幹部たちは、ニュー・フロンティア星系出身だったが、惑星調査員を監視するための現場の人員は他の星系出身の「元犯罪者たち」だった。


 彼らはほとんどが「地球出身」だった。


 地球は人類社会で最もインターネットが発達し、仮想現実の利用が盛んである。


 地球出身者が仮想現実を禁止するための監視員になるのは変に思えるが、それには次のような理由がある。


 地球では重大な犯罪でなく、未成年の時の微罪でもネット上にはずっと残る。


 いわゆる、「デジタルタトゥー」問題である。


 地球社会での進学や就職などが困難になった彼らは、他の星系に移民をすることで、それから逃れようとするのだ。


 地球のインターネットとは直接リンクできないニュー・フロンティア星系は、彼らにとっては過去を完全に消して、人生をやり直せる理想の社会なのだ。


 彼らにとって「仮想現実賛成派」は、理想の社会であるニュー・フロンティア星系を地球のような社会にしようとしている者たちなのだ。


 ある意味「敵」なのだ。


 惑星調査員監査局の一般局員たちの活動は次のようなものである。


 惑星調査員からニュー・フロンティア星系政府には、調査した地形データが提出される。


 その地形データの有用性に応じて政府から惑星調査員に報酬が支払われる。


 その内容について監査局は監査する。


 そして、地形データについて不自然な点を見つけるのだ。


 人工知能に任せれば短時間で済む作業である。


 しかし、監査局では人間による手作業で行っている。


 仮想現実やインターネットを嫌っている人間が多い監査局では、人工知能も嫌われているのだ。


 効率は悪いが、それで良しとしている。


 効率化のために人工知能を使うのは、「仮想現実を使うのが最も効率が良い」という話につながってしまうからである。


 仮想現実賛成派が「隠れ家」を設置する場所は、川や池など水がある場所が多い。


 長期滞在するには生活用水の確保が必要だからである。


 監査局は、地形データから川や池のある場所で洞窟など隠れ家にできそうな場所を推定する。


 そして、現地に調査のために局員が赴くのだ。


 空振りになることが多いが、仮想現実賛成派の惑星調査員と遭遇することもある。


 例えば、隠れ家にしている洞窟の中のキャンピングカーで仮想現実を使用中だった場合、監査局局員は「洞窟の地形データの意図的な未提出」を理由として取り締まる。

 

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