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第百二話 ニュー・フロンティアでの暴動 その9

 仮想現実賛成派であることを公言した新人議員に対して、長老議員たちは次のような方法で攻撃した。


 新人議員は、議員に立候補する前は「惑星調査員」だった。


 惑星調査員としての地表を調査中に見つけた洞窟の一つを隠れ家にして、そこで仮想現実を使用していた。


 隠れ家にしていた洞窟については、もちろん、ニュー・フロンティア星系政府には報告しなかった。


 その点を突いたのだった。


 惑星調査員として取得した情報を隠匿し、私的に利用するのは職務規定違反である。


 その点を指摘されると、新人議員はあっさりと議員を辞職した。


 そして、行方不明になった。


 惑星ニュー・フロンティアの未調査地帯に潜伏していると推定された。


 職務規定違反容疑でニュー・フロンティア星系警察に指名手配されたが、警察による未調査地帯の捜索は事実上不可能であった。


 未調査地域は、惑星全土の八十パーセント以上であり、捜索のためには莫大な人手と予算が必要であり、星系警察にはそんな余裕はなかった。


 元新人議員の職務規定違反は数年で時効になり、元新人議員は惑星首都を堂々と歩けるようになった。


 惑星ニュー・フロンティアでは、犯罪者が未調査地域に逃げ込めば、警察の手から簡単に逃れられる……とは、なってはいない。


 未調査地域は自然環境が厳しく、それに対応した装備と訓練した人間でなければ命を落とすからだ。


 それが可能なのは「惑星調査員」だった。


 ニュー・フロンティア星系議会の長老議員たちは、政治的不安要素になりかねない惑星調査員の制度に規制をかけようとしたが、それは困難だった。


 ニュー・フロンティア星系だけでなく、植民星系では、人類が居住可能な惑星の土地を担保にして、地球の銀行などから開拓資金を借りている。


 他の星系では、無線通信を使ったドローンにより、惑星表面の調査は比較的短期間に終わったが、ニュー・フロンティア星では人力による調査に頼るしかないのだ。


 惑星調査員を規制をすれば、惑星の土地の調査が遅れることになり、土地を担保とした資金の借り入れが困難になるのだ。


 惑星調査員を規制できない長老議員たちは、別の手段を考えた。


 惑星調査員を監視する組織を密かに設立したのだ。


 表向きは監察組織としたが、惑星調査員たちに対抗できる人員たちを集めることにした。


 しかし、それが難航した。


 惑星調査員を監視するためには、未調査地域に入らなければならず。


 そのような能力を持つ人物なら惑星調査員になった方が報酬も待遇も良いからだ。


 長老議員たちは元犯罪者たちから人員を集めることにした。

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