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第一話 跳躍暦百五十年

人類が西暦を廃止して跳躍暦となって百五十年目になる五月一日、地球の衛星である月にある月面都市の一つであるカグヤ・シティから一隻の宇宙軍艦が出航した。


それは日本国航宙自衛隊宇宙護衛艦「しなの」であった。






宇宙護衛艦(日本以外の国では宇宙戦艦と言われる)「しなの」の戦闘指揮所で、一カ月ほど前まで男子高校生だった十八歳のノリオ・大原は緊張していた。


戦闘指揮所にいる他の乗組員は、ノリオよりも年齢も階級も上の人間ばかりなのだ。


ノリオは地球の日本列島の東北地方にある高校を卒業して、航宙自衛隊に入隊して、一カ月の教育・訓練を受けた後、「しなの」に一番階級が下の他国の軍隊なら二等兵と言われる二等宙士として配属されたばかりであった。


西暦の二十一世紀ごろならば数年かかった教育・訓練が、教育・情報技術の発達により現在では一カ月で可能になっているが、まだ男子高校生の気分がノリオからは抜けていなかった。


それなのに、ノリオはこれから艦の運航に関わる重要な決断をしなければならないのだ。


「そう緊張するな。ノリオ・大原二等宙士。『当たり』が出なくても。何も罰は無いのだから」


艦長席から声をかけられたノリオはますます緊張した。


なぜならば、宇宙護衛艦「しなの」艦長であるノブヨ・小川一等宙佐は端的に言って「美女」であり、四十歳代のはずだが、アンチエイジング技術の進歩と本人の努力により二十歳代の外見を維持している。


ノリオの目を奪うのは、航宙自衛隊の制服をもってしても隠しきれない豊かな胸である。


(ネットで二十年前の航宙自衛隊の広報での艦長の画像見たけどまったく変わっていないな。今では死語だけど旧暦の二十一世紀の言葉の『美魔女』だな)


「大原二等宙士、私の胸ではなく、モニターの方に注目してくれ」


艦長が少し厳しい口調で言うのに、ノリオは身長百七十センチに満たない身体を震わせ、高校の時に思い切って告白した女子生徒から「あんた自分の顔を仮想現実で客観的に見たことあるの?」と言われた顔を青ざめさせた。


(どうしよう?『セクハラ』なんてことになったら、航宙自衛隊に入隊して一カ月で首に……)


小川艦長は微笑んだ。


「このくらいでセクハラなどとはしない。モニターを見てくれ。『異星人の置き土産』が見えてきたぞ」


ノリオがモニターを見ると、「異星人の置き土産」が見えてきた。


巨大なリング十二個が宇宙空間に浮かんでいた。


そのリングを宇宙船がくぐると、太陽系から何十光年も離れた地球人類が植民した十二個の恒星系に「跳躍」して一瞬で移動できる。


ただし、どのリングをくぐれば、どの星系に移動できるかは、まったくの不規則であり、実際にリングで宇宙船を跳躍させないと、十二個のどの星系に跳躍するかは分からないのだ。


そして、下っ端の二等宙士にすぎないノリオが、どのリングをくぐるかをこれから決めなければならないのだ。

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