炬燵じゃないけど-2 (霊夢、橙)
舞台
博麗神社…神社。
登場人物
霊夢…博麗神社の巫女。
橙…マヨイガにすむ化け猫妖怪。
妖夢…白玉楼の庭師。半人半霊。
橙だ。
散らかった部屋で、色々なものに埋まるようにして敷かれた布団から、猫耳が覗いている。
反応はほとんどないけれど、息はしている。
私は布団を剥がすと、その体を起こしてみた。
華奢だ。肩の厚みが五センチぐらいしかないみたいだ。
いつもはこんなに小さかっただろうか。
「……ぅ……」
焦点の合わない目が私を見る。一応生きているようだ。
「ウチに連れて帰るわ。いいわね?」
私の言葉に、橙は小さく頷いた。
支えていなかったらすぐに倒れてしまいそうなその上体に、そっと腕を回してみる。
抵抗もなく橙は体を私に預けてきた。
僅かばかりの温もりが、頬に、胸に、体に触れる。
霊夢はその温もりを、しっかりと、それで壊さないように、抱き上げた。
「……意外と軽いのね」
「……ん」
首筋に橙の頬が、耳に猫耳が当たって、くすぐったい。
霊夢は、橙を抱え上げたまま、庭に出た。
「……このまま飛び上がるのは無理ね。」
でも、今の橙に空を飛べというのも無理のある話だ。
ふと、連れてきた箒が倒れているのが目に入った。器用に房の一部を振って……そんなにしなくてもわかるわよ。
箒と眼があった、気がした。
あら、箒に乗せていけば良いのかしら?
さっきの猫よろしく、橙を箒に乗せてみた。
やっぱり、橙も後ろより前がいいらしい。
後ろだと、ふとした拍子に落ちそうなので、前の方が助かる。
箒に霊力を流そうとして、霊夢は誰にともなく呟いた。
「いや、妖怪を助けてどうするつもりなのかしら」
橙が霊夢の体に腕を回した。
弱々しいその力に、苦笑して霊夢は頭を撫でる。
「……気にしないことにするわ」
箒が再び空に舞い上がった。
***
「なあ、アリス。」
「今度は何?」
頭の上をふよふよ旋回する上海人形を捕まえて。
「負けた気がするんだぜ」
「なによそれ、哲学?」
「しゃんはーい?」
「ほーらーい?」
人形が一様に首をかしげる。
「…………いや、別に」
***
博麗神社に三ヶ月ぶりに降り立った魂魄妖夢―白玉楼の半人庭師―は、若干の違和感に囚われた。
「みょん?」
反射的に二本の刀を抜く。
別段不思議な気配は感じられない。
「縁側に霊夢さんが居ないだけですね。」
肩の力が抜けた。
半霊が笑いをこらえてプルプル震えている。そんなに笑わなくても……
縁側に上がってみる。普段ならこの辺りに霊夢がいるはずなのに……
「霊夢さんはいらっしゃいますか?」
抜き身の日本刀を構えたまま、手近な障子を引く。
「……ん」
「あんたねぇ……何でこうも間の悪い……」
「みょん」
霊夢の膝枕に橙。それも、ものすごい気持ち良さそうな。
方やこちらは二本の刀を構えて。
口癖が口から飛び出してしまった。
半霊が必死になって笑いをこらえている。
幽々子様。私の頬、赤くなってますよね。
***
「えっと」
刀を納めた私に正座をさせた霊夢さんが鬼に見えます。
「あんたは用事だけ済まして去ればいいのよ。忘れるでしょう?」
霊夢さんの笑みが怖いです。全部話してすぐに帰ることにします。
「はい。幽々子様から伝言です。今年も桜は博麗神社の方が先に咲くと思われるので、花見の会は博麗持ちでお願い、だそうです。」
「春雪異変みたいなのが起きなければ当然ね」
ひぃぃっ……言葉の選び方が容赦ないです。鬼か悪魔です。
「……はい。あれは若気のいたりというかその……」
「で?他にもあるでしょう?」
声が厳しいです。本当は私から言うことではないと思うんですが、もう正直どうしようもないので言います。
「……はい。紫さまの冬眠明けはあと一週間ほどだそうです。」
本当は私ではなく、藍様や橙が言うべき事ではないんでしょうか……。
「そう。ありがとう。三日後の昼からにするわ。」
その橙はどういう因果か、こうして寝ているわけですが……
「……んぅ」
「どうしたのかしら?」
寝返りをうった橙に、毛布を掛けなおす霊夢さん。優しげな目が暖かいです。
「橙はどうしてこのようなことに?」
私の質問には微笑が返ってきた。
「私にもわからないわ」
「そうですか」
またも遅くなりすみません。
桜の季節が到来いたしました。皆さんは見に行かれましたか?
僕は家の近くの川沿いに見に行きました。
桜は日本人の心ですね。
さて、あと二話です。それでは。




