炬燵じゃないけど-1 (霊夢、橙)
舞台
博麗神社…神社。
マヨイガ…どこかにある家。猫がたくさんいる。
登場人物
霊夢…引き続き登場。博麗神社の巫女。
橙…マヨイガにすむ化け猫妖怪。二本に分かれた尻尾。
博麗神社の社殿の引き戸が勢いよく開け放たれる。
部屋の中へ冷たい風が吹き込んだ。
「……」
引き戸が音を立てて閉まった。
「……いや、今日こそは朝イチで掃除するわ」
社殿から出てきたのはいつもお馴染み、博麗霊夢。博麗神社の巫女である。
「一週間ぐらい前にもこんなことがあったわね――」
せっかく気合い入れたら風が冷たい日が。
あの日は風の冷たさに一回退散したような……
……今日こそは朝一番で掃除してあげないと、氏神さまが怒るわね。
そのあとは風邪を引いていたから、一週間以上朝の掃き清めが出来ていないのね。
シャカシャカと箒を使う。
玉砂利を掃き清めると、枯れ枝に混じって、段々と桃の花びらが混じるようになってきた。
そうそう、あの日は魔理沙が降ってきた日じゃない。
いきなり背後に降ってくるからビックリしたわ。
すごい熱で、それを移されて私も寝込んだわね。
魔理沙は意地を張って『治ったぜ!』とか言ってたわね。虚勢がバレバレだったわ。
庭は掃き清めて、今度は鳥居と大階段の方に行く。
本当は表参道なのだけれど、誰も彼も、裏参道――というか上だから空参道――からの来客だから、掃除しなくてもいい……
……いや、氏神様がお怒りになるでしょ……
……氏神様なんていたかしら?……
霊夢は頭を振った。
なんだか巫女らしくない事を考えてしまった。
――というか巫女が自分で認めたらお仕舞いね――そう思って、大鳥居の方にも足を進める。
社殿の角を回ると、いつもいつもお金は呼び込まないのに厄介事を持ち込む、博麗神社の賽銭箱が鎮座している。
『にゃーお』
何処からか猫の鳴き声が聞こえる。今日も平和だ。
『にゃーお』
三毛猫が足の間に擦りよってくる。
「どうしたのかしら?」
箒を置いて持ち上げてみる。人に慣れているみたい。柔らかい肉球が癒されるわね。
『にゃう』
頬をつついてみたら、怒ったような目を向けられた。
悪いことをしたわ。
地面に下ろしてやると、尻尾にもう一本リボンが付いているのに気づいた。
「あら、マヨイガの猫?」
『にゃ』
ピーンと頭の中で何かが解った。
マヨイガに行くべきだわ。
「様子を見にいった方がいいわね。一緒にマヨイガまで行くかしら?」
『にゃう』
霊夢は飛び上がろうとして――手に持った箒に気づいた。
置きに行くのは面倒ね。
多少の逡巡。
「決めた。箒に乗っていくわ。あんたも来るでしょ?」
『にゃう』
袴はズボンと同じで、両足が別れた構造をしている。その間に箒を通して、後ろの膨らんでいる先に猫を乗せようとした。
猫は器用に箒を伝うと、霊夢の前に定位置を決め込んだ。
「あら、前がいいの?」
『にゃ』
「残念ね。魔法少女は箒の後ろに猫をのせるものらしいのに」
『?』
不思議そうな顔をする猫。
霊夢は笑って、箒に使役の簡易な術式を組む。
箒は霊夢の霊力を吸いとり、霊夢と猫をつれて空へ舞い上がった。
***
人形が持ってきたティーカップから湯気。
「なあ、アリス。」
「なあに、魔理沙?また何かの相談?」
「なんだかアイデンティティーを失った気がするんだぜ。」
「気のせいでしょ」
「しゃんはーい」
***
マヨイガは、その名の通り、「迷い家」であって、本当は迷い込まない限りたどり着けない。
そのマヨイガに、霊夢は両足を付けて降り立った。
「思ったより乗り心地はいいのね。霊力消費はすごいけれど。」
庭がかなり汚い。もう何日も掃除してないのかしら。
箒に掃除の術式――といっても、庭を端から端まで往復しながら一方向に掃くだけ――を組んでおいて、必要な霊力も注いでおいて、マヨイガに入る。
「橙。入るわよ。居る?」
小さな家は静まり返っている。不気味なほどに静か、いや。
生活感がない。
「……?」
霊夢は奥の間の襖に手をかけた。
ここから先は、これまで入ったことがない未踏の領域ね。
片付いてないし、とか言って、橙が絶対に見せてくれない部屋。
見たら怒るかしら――いいや、開けてしまえ。
***
襖が突然開いた。
薄っぺらい布団越しに、光が変わってる……誰か来た……
「……生きてる?」
……霊夢……?
***
「なあアリス。」
「今度は何?」
ソーサーとカップが当たる。
「私のより高性能な箒が生まれた気がするぜ」
「いきなりどうしたの?」
「ほーらーい?」
あと一話!あと一話で終わるから!
また動画上げたんで許して下さい。
http://nicovideo.jp/watch/sm30846690
https://youtu.be/M9chXqTkHY8




