「あたい⑨だから風邪引かないのに……」「認めた!?」 (バカルテット、大妖精)
舞台
魔法の森
登場人物
チルノ…氷の妖精。なんだか頭が弱い。
大妖精…チルノの側にいる妖精。
リグル…蟲の妖怪。ボーイッシュ。
ルーミア…人食い妖怪なのに人を食わない。
ミスティア…歌う夜雀。屋台をやっている。
夜半、満点の星空が広がる、魔法の森。
数ある大木の中でも特に大きい樹の中から、何人もの少女の声が聞こえる。
床にくっついている黒い半球と、それに話しかける触角のついた少女。
「ルーミアは、具合悪いんだから寝てなよ。治りが遅くなるよ。」
「そーなのかー?」
「そうだよ、あと、ただでさえ暗いのに闇出さないでよ……」
「なんでー?」
「私の蛍だけじゃ暗いんだよ?」
「そーなのかー」
「聞いてる!?」
床にくっついている黒い半球が消えると、金髪に赤いリボンをつけた少女が現れた。
高い方の声の持ち主、ルーミア。闇を操る程度の能力を持つ妖怪だ。
「リグルはおせっかいなのかー。ありがとうなのだー」
「えっ……えっ!?」
「やさしいリグル嫌いじゃないのだー」
「……あっ……いや、その、素だから……」
「星が見えるのだーわはー」
「……まあ、世話焼きなのは自覚あるけど……っておい!それ私のホタル!」
一瞬頬を赤らめ、すぐに突っ込みに回った触角の少女が、リグル・ナイトバグ。蟲を操る程度の能力を持つ妖怪少女。
「ねぇ……そんなので動揺しないでよ……」
「……言われ慣れてないんだよ!」
取り乱すリグルに対して、冷静に声を掛けた妖精が、大妖精。
リグルは言葉を重ねる。
「でもさぁ。面倒見がいいだとか、可愛いだとか、そういうの言われると自分じゃないような気がしてさぁ……どうしても」
マントの端をつまんでもじもじと言うリグルに、大妖精は額に手を当ててため息をついた。
「女の子になろうよ……」
「いや、私は女の子だよ!?」
リグルの叫びが樹の外まで空気を震わす。
すると、部屋の反対側の隅から、高い、でも弱々しい声がした。
「うるさい……あたいの頭に響く……」
「……ああ、ごめんごめん。」
「あたいがずつーごときに負けるわけ無いのに……」
床にへばりついているのは、6枚の羽を持った妖精。
大妖精が寄ると、その小さい額に手を当てた。
「チルノちゃんやっぱり熱出てるね……」
「あたいは、さむい……」
「でも、おでこは熱いよ?」
「あついの……あたい氷の妖精なのに……」
妖精が寝返りをうって言う。
「あたい溶けちゃうよ……」
「「今朝からそればっかりじゃない!?」」
「そーなのかー」
倒れている方の妖精が、氷を操る程度の能力を持つチルノ。
「それにしても、いつもあんなに元気なチルノちゃんが元気ないと、私まで元気でないなぁ……」
大妖精がため息をつくと、チルノの側に寝転がった。
「はしたないよ、ワンピースなのに……」
「リグルちゃんはいいよね、いつもズボンだもんね。」
「……別に、スカートも持ってるけど、なんか……」
「なんか?」
リグルは目線を落とす。
「心許ないっていうか、スースーするっていうか……」
「……女の子になろうよ……」
「女の子だよ!?」
今晩何度めかの叫びが炸裂する。
「聞こえたよぉ♪」
「ミスチー?」
「ミスティアちゃん?」
歌いながら入ってきたのはミスティア・ローレライ。夜雀である。
「屋台は終わったの?」
リグルの質問に、ミスティアは歌を止める。
「……それがね、ちょっと問題があって、切り上げてきたの。」
「何かあった?」
ミスティアは息を吸った。
「夜半の鰻屋台~♪幽霊みたいな人が来て~♪半分幽霊も来て~♪」
「……幽々子と妖夢だね?」
リグルに頷いて、歌詞は止まらない。
「屋台食べ尽くして~♪女将を補食したぁ~♪」
「「また!?」」
大妖精とリグルの声を無視して、ミスティアは床に伏せる二人に言う。
「風邪引くなんて珍しいね。ヤツメウナギ食べる?体調不良に効くよぉ♪」
「そーなのかー」
「……あたい元気だもん……」
大妖精はミスティアの肩を掴んで揺さぶる。
「そのウナギ、鳥目にしか効かないでしょ!それも、ドジョウとかの日もあるでしょ!」
「あぅあぅあー♪」
「ちょっと、チルノが倒れて寂しいのはわかるけど!」
リグルの手を借りて、揺さぶる手から逃れたミスティアは、逆に大妖精の手を握る。
「落ち着いて♪」
大妖精はため息をついた。
「ごめんね、ちょっと私も不安定になっちゃったみたい。チルノちゃんが、朝から体調悪くて、心配で……ありがとう。」
「どういたしましてぇ♪それにしたって、風邪なんてはじめてだねぇ♪」
チルノが寝返りした。
「あたい⑨だから風邪引かないのに……」
「「「認めた!?(のかー)」」」
四人の声が交差する。
チルノはいきなり注目されたのに驚いて、慌てて手を振る。
「前に……魔理沙がいってた。あたい⑨だから風邪引かないんだって。」
「……なんだ……なんもわかってないんだ……」
「……チルノちゃん……」
「……バかなのかー」
「ううっ、バかじゃないもん!」
「バカしかそんなこと言わないわ♪」
笑い声が上がる。
「むきーっ!あたいを笑うな!」
夜はまだ続くようです。
※作品中の歌曲及び歌詞は、オリジナルであり、特定の楽曲を指すものではありません。また、いかなる楽曲の二次創作でもありません。




