病に染まりし魔の館-2 (美鈴、咲夜、レミリア)
舞台
紅魔館…三日月湖のほとりに建つ、レンガ造りの洋館。
登場人物
美鈴…紅魔館の門番。
咲夜…紅魔館のメイド長。
レミリア…幼き吸血鬼。
フラン(妹様)…レミリアの妹。
パチュリー(パチェ)…紅魔館地下の大図書館に住む魔女。
「……」
「……」
お二人とも頭が冷えたみたいで、静かになりましたね。
「それで、どうされたのですか?」
起き上がった私に、咲夜さんの冷たい声が刺さります。
「美鈴。余計な口を挟まない。」
レミリア様の御言葉も叩きつけられます。
「いきなり割り込まないで。これは咲夜の問題よ。」
あれ、風当たりが強い?
「お嬢様、咲夜さん、弾幕撃っても話にならないです。落ち着いてください。」
「美鈴。持ち場に戻りなさい。越権よ」
冷たい言葉を放つ咲夜さん。牽制ナイフも飛んで来ました。
私はするりと身を翻すと、ナイフを避けて、レミリア様の紅い目と目を合わせます。
「咲夜さん。一度話を聞かせてください。お嬢様、どうされたのですか?」
「美鈴、美鈴なら通じると思うんだけど……」
堰を切ったようにレミリア様が話しだし、咲夜さんが背後でため息をつくのが聞こえます。
「パチェとフランが風邪を引いたのは知っているわね?」
「はい。咲夜さんから隔離令が出ていました。」
レミリア様は私の返答が不満だったのか、ふっと息を吐きます。
「それなのよ。大分重い風邪で、感染力も強くて、特にパチェなんか今にも死にそうって言うじゃない。」
「……」
「私は、パチェとは長いこと知り合いで、パチェが心を許してくれたただ一人の生き残りなの。」
「……」
「だから、私はパチェを看病しに行きたい。きっとパチェの力になれるから。」
「……病は気から、と言う話ですね?」
「美鈴らしい返答ね」
レミリア様は苦笑して言う。
「魔力位相や波長も大まかにだけど解るから、そういうことでも力をあげられるはずなの。」
「そうだったんですね。」
私は門番なのであまり細かいことは知らなかったのですが、何とも単純な話ですね。
「お嬢様、お考え直しください。」
咲夜さんが割り込んできました。
「咲夜。何を言うつもり。」
レミリア様の言葉を聞いているのかいないのか、咲夜さんは話し続けます。
「お嬢様がお風邪を召されたら、どんなに大変か。お嬢様の身の安全を第一に考え、反対させていただきます。」
「……私はいいの。風邪はおそらく大丈夫。実際、フランは重症じゃ無いんでしょう?」
「そうですね。」
「私は体力もあるし、魔力もあるし、体質も悪くないから、大丈夫よ。」
「ですが……」
「じゃあ、パチェを見殺しにするの!?」
お嬢様が叫びます。
「私は、親友が死にそうなのに、助けてあげられるかもしれないのに、何で!何で黙って見てないといけないの!何で会うのも駄目なの!」
「お嬢様……」
レミリア様の目の端から、涙が垂れます。
「もう……もう無理……耐えられない……パチェ……」
私はレミリア様の肩をそっと抱きます。
レミリア様は、私の胸に顔を埋めて泣き出しました。
私はそのまま、背後にいる(はずの)咲夜さんに話しかけます。
「咲夜さん。レミリア様のご希望通りでよろしいかと思います。」
「何故。」
「私が責任もって、お嬢様の回りの『気』を操作し、感染を防ぎます。」
「……」
「病は『気』から、って言うじゃないですか。」
「……」
「それに、私にとってはお嬢様も妹様もパチュリー様も、お守りするべき大切な存在です。お許しください。」
「……」
沈黙が訪れます。
私には10分にも20分にも感じられる長い沈黙でした。
咲夜さんがようやく口を開きます。
「……わかりました。お嬢様の看病、その付き添いを美鈴に命じます。門番のシフトは妖精メイドから一部を充てるように、詳細は副長に一任します。」
それを聞いて、その場にいた妖精メイドのうち何人かが伝令に出ます。
「咲夜さんの許可が出ましたね。すぐ行きますか?」
「……美鈴、ありがとう。」
あれ、お嬢様にお礼を言われてしまいました。いつぶりでしょう。




