病に染まりし魔の館-1 (美鈴、咲夜、レミリア)
お待たせいたしました。
舞台
紅魔館…三日月湖のほとりに建つ、レンガ造りの洋館。
登場人物
美鈴…紅魔館の門番。実際はザル。
咲夜…紅魔館のメイド長。時を止め、ナイフを投げる。
レミリア…幼き吸血鬼。訳あって館ごと幻想入りした。
紅魔館――湖のほとりに建つ館――の廊下に、二つの声が聞こえます。
私、紅美鈴の持ち場は本来、門番です。あまりにも平和すぎて、居眠りなんかも……何でもないです。
実は、門番以外にも、庭木の手入れや妹様のお相手などもさせていただいております。
庭木にやる水を汲みに来たついでに……本当についでですよ?……館の中を歩き回って時間をつぶし……いえ、サボりでは……。
さて、“外から見るより広い”紅魔館ですけれども、これは、今のメイド長、十六夜咲夜さんの能力で、内側だけ広げてあるからですね。
妖精メイドや門番に至るまで、従者全員に個室があるなんて素晴らしいです。
廊下の角を曲がると、先程から聞こえる二つの声の主が見えてきました。
甲高いの方が、我らが紅魔館の主、レミリア・スカーレット様ですね。
もうひとつの、女性にしては低い方が、メイド長の咲夜さんです。
お二人、何かを言い争っている様ですね。少し聞いて行きましょう。
……門番として、邸内の情報収集は大事です。ええ。サボりではないです。
「だから!主の命令は絶対よ!」
「お嬢様、いくらお嬢様のご希望と言えど、」
「何で!」
「お仕えする身としては、お嬢様を危険にさらすわけには」
「私はいいの!」
「お嬢様の身の安全を第一に考えるのは従者の務めです。」
「裏切らないで!」
「いえ、決して裏切りではありません。」
「何で!」
「ただひたすらに、お嬢様が大事なのです。」
――何か、お嬢様のご希望があって、それに咲夜さんが反対している、といったところでしょうか?
「じゃあ、じゃあ、咲夜は、見捨てればいいと思ってるの!」
「いえ。」
「どういうこと!」
「妹様も、パチュリー様も、私どもメイドが責任を持って……」
「わたしは!?」
「お嬢様は見守っていただければ。」
「それじゃダメなの!」
――最近のパチュリー様と妹様……あ。
「私が看病すれば治る!」
「確かに、お嬢様が看病なされば、気の持ちように効果が、」
「じゃあ何で!」
「この風邪は相当強力です。もし感染すれば……」
――パチュリー様と妹様が、お風邪を召された件ですかね?
「だから!だからなの!」
「お嬢様!」
「風邪移ってもいいから!お願い!」
「なりません!」
「看病させて!パチェを!もう無理!」
「お嬢様!」
駆け出すレミリアの行く手は、しかし時を止める能力を持つ咲夜に阻まれる。
「いい加減に解放しなさい!」
ナイフや炎が飛び交い始めました。
でも、お嬢様や咲夜さんの本気を知っている私から見れば、手加減しているのがあからさまです。
それもそのはず。
お互い、相手を傷つけるつもりなんて全く無いんです。
さっきから立ち聞きしていた私にできることはただ一つでしょう。
そう。何気ない様子を装って、二人の間に割って入り……
「「美鈴!?」」
「お嬢様、咲夜さん、どうしました――
――二人の間に割って入った私の背中にナイフが、顔面に炎が。
あうぅ。
ピチューン。




