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永遠の違和感_1 (永琳)

幻想郷にインフルエンザです。


舞台 永遠亭…迷いの竹林にある屋敷。


登場人物 永琳…幻想郷の薬師。月の人だが、訳あって地上にいる。

輝夜…かぐや姫。月の人だが、訳あって地上にいる。

妹紅…不死の薬を飲んだ貴族。本来人里に住む。

うどんげ…月のウサギ。永琳の弟子。本名は鈴仙・優曇華院・イナバ。

きっかけは小さな違和感だった。



――生理かしら?


冬の永遠亭は、竹林に囲まれ、すっかり雪化粧である。

八意永琳(やごころえいりん)―幻想郷で一番の薬師―は、薬草をすりつぶす手を止めた。


今日は妙に勘が働かない。


本来月の人である永琳には、生理や普通の風邪といった不調はほとんど起きないはずである。

「……少し暖まるか」


月の人であってもやはり寒さは感じる。

永琳はすりつぶした粉を鉢に移すと、部屋を出た。


障子を明け、縁側に出る。足に感じる冷たさに、思わず身震いがする。

縁側を歩きながら、思わずくしゃみが出る。

「……昨日の雪のせいか」

心なしか足早に、居間を目指す。




「あれ、永琳、どうしたんだ?」

居間には藤原妹紅(ふじわらのもこう)―永遠亭の居候―が、こたつに入って待ち構えていた。

「朝からこたつとはいいご身分ねえ」

「暖かいんだ」

「働かないの?」

「寒いんだ」


永琳は深くため息をつくと、妹紅の向かいに潜り込む。

妹紅は、それを見て勝ち誇ったような声をあげた。

「それ、永琳も休んでるじゃないか。」

「少し寒すぎたからねえ、すぐに戻るわ」

ガタンッ


のんびりした会話を断ちきって障子が開け放たれた。

「おはよう妹紅」

蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)―永遠亭の主―が長い裾を引きずって入ってきた。

「……全開にするなって昨日もいっただろ?寒いんだ」

「……私は寒くないから、いいのよ」

「寝間着のままならな」


輝夜は大きな欠伸で妹紅の言葉を無視して、妹紅の向かいに座ろうとした。


「へぶっ」

――永琳にけつまずいて派手に転んだ。


「……」

「……ばーか」


「永琳、居たの」

「居ましたけど……」

「珍しいわね、こんな時間に、こんなところに居るなんて。」

「……少し寒すぎたので……へくしっ…?」


永琳の頭脳、月の賢者と言われる頭脳が、ようやく違和感に気づいた。

月の人が普通の風邪を引くはずがないのだ。


なにかがおかしい。


妹紅と輝夜が頭上でいがみ合いを始めたのを他所に、考えを巡らせる。


月の人に体調不良が出るとしたら……

「……異変かしら……?」

そういえば少々体がだるいような気もする。頭が重いような気もする。


そうか、いつも永遠亭に運ばれる病人はこんな気持ちだったのだろうか――


「ああもう、あんたはいつだって――」

「お前こそ昨日も一昨日も――」


いがみ合う二人の声が頭に妙に響く。

永琳は思わずこたつに突っ伏した。


「やる気ね!スペルカード詠唱、『蓬莱の樹海』!」

「喧嘩上等!スペルカード、『フェニックス再誕』!」


大声で高火力のスペルカードを詠唱する二人に、永琳のなにかがキレた。

こたつを撥ね飛ばす勢いで立ち上がると、腹の底から叫んだ。

「てめえら、いい加減にしろ!外でやれ!ぶえくしっ」


「……永琳?」

「……そんな口調……」

妹紅と輝夜は驚いて永琳を見つめる。

永琳は、意識が遠のくのを感じた。

「あ、いや……」


……熱が出てるときに激しく動くと、貧血に……


「お、お師匠様!?」

背後から鈴仙(れいせん)優曇華院(うんどげいん)・イナバ―月ウサギ―が駆け込んでくるのを感じつつ、永琳は意識を手放した。


「お師匠様、お師匠様!?どうなさったのですか!?」

「うどんげ、永琳を見てあげて」

「は、はい、姫様。」

「うへぇ、すげえ熱。永琳が熱なんて珍しいね」


……皆の声が遠くに……あれ……月の人……風邪引かない……?

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