超常現象研究部の部室の今
「さあ!今日も部活を元気に始めるよ!」
宇佐の元気な声が元準備室だったであろう小さな部室に響く。
部室には生徒用の椅子が3脚座った人物が向かい合うように置かれていて、他に生徒用の机は無く、会議室に置かれているような長い机やパイプ椅子もない。
「部活というより、新入部員の勧誘の話し合いだろ。部員集めは時間が経てば経つほど難しいし。」
仙太郎は荷物を窓際の棚の上へ置き宇佐へ応えた。
綾も仙太郎の近くへ自分の荷物を置き、置かれてある椅子の1脚に軽く座った。
仙太郎も綾の隣の椅子へ座ると、姿勢へ前屈みにして話を続けた。
「今は4月の後半へ入っていて、ほとんどの入学した生徒は自分の入りたい部活動へ入っている。」
「仮入部の生徒や帰宅部の生徒を中心に探して入部させれば良いじゃん。」
窓際へ自分の荷物を綾の隣へ置き、宇佐も残った椅子へ座り話を続けた。
「でも・・・その部活動へ入っていない生徒をどのように見つけるの?」
綾も遠慮がちにだが、2人へ向かって意見を言う。
「ポスターと校内放送、それと校門で声かけ・・・それぐらいしかないんじゃないか?」
「えぇー!地味で面倒じゃん!!」
「あのな・・・ウサ・・・。」
静かに名を呼ぶ仙太郎に宇佐は「ん?」と間の抜けた声で返した。
「どっかの誰かが『超常現象研究部』を作って、すぐに新入部員勧誘をせず5日間ほぼ何もしないでいたから、今こうして急いで部員確保の為の話し合いをしているんですよねぇ、九重部長~?」
「だって果報は寝て待てだよ?」
小さな怒りを抑えるように笑顔でこめかみをヒクヒクさせながら言う仙太郎とは逆に、宇佐はスカートのポケットから飴を取り出し舐め始めた。
「寝て待った結果がこれだよ!仮にとは言え『超常現象研究部』を作って5日間。そのうちの部活動を僕らがした日は3日間。その3日間で新入部員勧誘の話もせずにほとんど部室で過ごしていただけ!」
「まだ、あわてるような時間ではない。それに土日は休まないと。」
「急げよ、バカ部長!土日休みとか会社員かよ、僕らは!」
マイペースの宇佐へのツッコミに仙太郎は疲れを感じ始めた。
「でも、その・・・何もしなかった訳ではなかったから・・・。」
綾は気まずそうにおろおろしながら仙太郎へ言う。
「部室を確保して、このように椅子も部員の数だけ手に入ったのだし・・・。」
「確かにそうだな。部室を確保しないと部活動として活動出来ないし。」
「センちゃん、アヤちゃんと私を明らかに差別しているよね?ひいきしてるよね、ねっ?」
仙太郎と綾の会話を聞き、宇佐は頬を膨らましながら仙太郎の肩を乱暴に揺さぶった。
「別に差別はしてないし、ひいきもしてない。」
「嘘だっ!!!」
宇佐の叫びは虚しく、その場の空気に響くだけだった。