再勧誘と夢に堕ちた者
遅群の元にあの男が現れる! そして、遂に特殊組織が発足! 最初の任務は夢の世界!
死夢現間~再勧誘と夢に堕ちた者~
前回の話の翌日――
遅群は早朝のジョギングをしていると黒尽くめの男性に声を掛けられた。
近くのアウトレストラン――
(遅群)「……その黒いコート脱いだら?」
(黒いコートの男性)「……」
(遅群)「ネクリアー・ホドスさん」
黒いコートの男性は慌ててコートを脱いだ。着ていた本人は墓道 桂だった。
(墓道)「そのあだ名は止せと言ったよな!?」
(遅群)「悪い、悪い、脱がせる為に言っただけだよ」
(墓道)「たくっ! ……さてと、本題に入るが……遅群…【特殊討伐班】に入る気は無いか?」
(遅群)「これで二度目ですが……俺は……断ります!」
(墓道)「…そうか」
(遅群)「断るのを断ります!」
(墓道)「……はい?」
(遅群)「だから、承諾すると言ったんだよ」
(墓道)「何故、急に承諾を……昨日の件でか?」
(遅群)「それも在るが俺は何をすべきかを考えた 俺は表の行動は不向きだ 裏の仕事なら得意だと気付いた」
(墓道)「…そうか、有難う 早速だが仕事……と言いたいところだが、明日は特殊討伐班の現メンバーを改めて紹介したい 明日の早朝、紙に記されている場所に来て欲しい」
そう言うと墓道は黒いコートの右ポケットから紙を取り出して遅群に手渡した。
(遅群)「…分かった」
遅群は承諾した。
それから、数時間後――
遅群は三弓家に帰って来た。
(遅群)「ただいま」
(麟)「お帰りなさい」
(遅群)「一応、言うけど特殊討伐班に――」
(麟)「分かってるわ さっき、天子ちゃんから連絡があったから」
(遅群)「いつの間に――」
(麟)「昨日ね」
(遅群)「そうか」
次の日――
遅群は紙に記されていた渋谷の廃ビルに着いた。
(遅群)(こんな所に拠点とは驚く……)
遅群は廃ビルの中に入ると墓道が待っていた。
墓道に案内されて廃ビルの地下に行くと一つの空間に出た。
(墓道)「ようこそ、特殊討伐班へ――」
(遅群)「此処が――」
(墓道)「紹介するよ……先ず一人目、元殺し屋の白川 虎 二人目はリアルシューティングゲームのプロ、玄蛇 武亀 三人目は剣術の達人で青村流師範代の青村 竜 四人目はボクシング前準優勝者の朱亥 雀 五人目は前回の事件で多数の人間(SAT)を殺害した経歴を持つ淵浪 獄美 6人目は淵浪 獄美の妹で医療担当の淵浪 天子 そして、俺が特殊討伐班を纏める班長の墓道 桂だ。宜しく! 遅群」
(遅群)「宜しく」
墓道と遅群は握手をした。
(墓道)「早速だが、お前に頼みたい依頼がある」
(遅群)「その前に訊きたい事がある」
(墓道)「何だ?」
(遅群)「仕事が無い日は如何して居れば良い?」
(墓道)「気楽に暮らして居れば良いさ」
(遅群)「もう一つ、この組織は何が最終目的だ?」
(墓道)「皆が仲良く暮らしていける為の裏の組織かな」
(遅群)「そうか」
遅群は墓道の答えに薄らと笑みを浮かべた。
(墓道)「さてと、依頼の方だがこれは知り合いの依頼だ 【数日前、自分の目の前で意識を失い今も昏睡状態で原因を医者に頼んでも分からずじまいで……どうか、友を助けて下さい】と言う依頼だ 遅群、出来るか?」
(遅群)「…可能だが、時間が掛かるぞ」
(墓道)「構わない」
そう言うと遅群は早速出かけた。
(青村)「あいつにこの仕事が務まるのか?」
(墓道)「この組織のモットーは実力を正しく使う」
(青村)「?」
墓道は笑みを浮かべた。
その頃、遅群はオートバイクを使って依頼主の家に到着した。
(遅群)「此処か――」
遅群はインターホンを鳴らすと一人の男性が現れた。
(男性)「墓道さんの仲間ですか?」
(遅群)「正確には部下です」
(男性)「……」
(遅群)「依頼に書かれて居た友は?」
男性は遅群を中に入れた。すると、布団に寝ている男性が居た。
(遅群)「彼が?」
(男性)「はい」
(遅群)「済みませんが彼と二人だけにしてくれませんか?」
男性は頷くと家から出て行った。
(遅群)「さてと、先ずは――」
遅群は目の色を紫に変えた。遅群は昏睡状態の男性を見た。
(遅群)「…やっぱり、夢の中に閉じ籠っている」
(遅群)(麟の弟と似ているな……)
遅群は目を瞑った。そして、手を握った。
遅群は男性の夢の中に入って行った。
(遅群)「おいおい……これは流石に――」
遅群が目にしたのは未来都市で寝込んでいる男性が《お偉いさん》になっていた。
(遅群)「まるで自分の世界――」
その時、未来都市全体に警報が鳴った。
(遅群)「何だ!?」
(警備員)【現在、この都市に不審者が侵入しています。若し見かけたら構わずに殺して下さい】
(遅群)「物騒な都市だな」
その時、右側から銃弾が遅群に向って発射された。だが、遅群は日本刀(宝刀)で防御した。
(遅群)「不審者はやっぱり、俺か!」
遅群の周囲には刃物を持った集団が囲んでいた。
(遅群)「…こいつ等を殺しても良いのか……夢は人の記憶から出て来る者達……それを殺すって事は……」
遅群は上空に飛び空中を蹴って建物の中に突っ込み身を隠した。
(遅群)「彼等を殺さずに目標の人物に接触しなくちゃ何も始まらない! …取り敢えずは男性の居場所を特定しないと――」
遅群は念を込めると携帯電話が目の前に出現した。
(遅群)「これで連絡通路は確保した 後は――」
遅群が携帯電話に念を込めると近くの廃工場に矢印が出た。
(遅群)「此処に男性が居るのか」
その時、ビルが揺れた。
(遅群)「何だ!?」
更に揺れが激しくなった。
(遅群)「まさか、夢の中の人達が建物を壊す為に爆弾をビルに投下してるのか!?」
遅群は立ち上がり屋上に向った。
(遅群)「屋上から矢印のある場所に向って空中を蹴りまくれば何とかなる!」
遅群が屋上に到着すると軍用機20機相当が飛んでいた。
(遅群)「予想外だ……と言いたいところだがあの時の棘よりはマシだ!」
遅群は屋上から飛び降りてビルの壁を蹴って隣のビルに突っ込み壁を壊して中に入りそこから地上に降りて矢印の方とは真逆の方に走り出した。
(遅群)「…仕方ないけど…此処は一旦、距離を置いて夢の中の人達を殺さずに追いかけない様にしないと!」
遅群は上空に飛び上がり飛行船の中に入った。
(遅群)「此処なら少しは策が練られる時間が――」
その時、警報が鳴った。
(遅群)「今度は何だ!?」
(警備員)【緊急事態発生! 現在、怪物達が都市に向けて進行中! 市民の人達は地下に逃げて下さい! ――以上!】
(遅群)「怪物!」
遅群が飛行船の窓側に立つと確かに遠くから怪物達が都市の方に進軍していた。
(遅群)「予定変更だ! 先ずはあれを叩き潰す!」
遅群は飛行船から飛び降りて怪物達が居る方向に飛んだ。
(遅群)(あれ(怪物達)は眠っている男性が無意識かで行なった自己防衛本能の産物! だが、怪物達が夢の中の人達を襲って消えれば現実の人間(眠っている男性)にも影響が出てその人の事を直ぐに忘れてしまう。其れだけは絶対に阻止する!)
遅群は怪物達が進行している砂漠に降りた。
(遅群)「……俺はお前らの事は知らない…だけどお前らも俺の事を知らない…一気に終わらせる!」
遅群は怪物達の懐に潜り込み連続で斬り刻んで行き全ての怪物を一瞬で片付けた。
(遅群)「さてと……」
その時、前方から謎の狙撃を受けるが遅群はギリギリで気付き致命傷を避けた。
(遅群)「今の狙撃は――」
遅群が目の力を使い遠くの距離を正確に見えるようにした。(地球の裏側さえ見えてしまう力)遅群は前方800mに人影を確認した。
(遅群)「あそこからの狙撃か…大した腕だ」
(遅群)(そう言えば さっきの人影…眠っている男性にそっくりだった)
遅群が携帯画面を確認すると男性の反応が二つに増えていた。
(遅群)「これって!」
(遅群)(まさか、分裂! ……夢の中だから不可能では無いとはいえ……狙撃手か……だったら)
遅群は目を瞑った。その間にも狙撃手の銃弾の嵐は続いた。
(遅群)「我の中に眠る、駆ける幻獣…スレイプニル! 今こそ現出せよ!」
そう言うと遅群の右横にスレイプニルの姿が現れた。
(スレイプニル)「私を出現させるとはその目の力か?」
(遅群)「いや、此処は夢の世界ですよ 何だって出来る」
(スレイプニル)「それで私がやるべき事は?」
(遅群)「簡単ですよ 狙撃手の攻撃を掻い潜ってくれ!」
(スレイプニル)「奴を殺しても良いのか?」
(遅群)「殺すな! あいつを動かせない様にするだけで良い!」
遅群の目はスレイプニルの目と同じになった。
(遅群)「殺せば現実に悪影響が――」
(スレイプニル)「それは本人には大丈夫でしょ?」
(遅群)「普通はそうだろうけど……今回の件は眠っている男性の友達からの頼みで来た。部屋の中はシューティングゲームが沢山あった。恐らくだが二人の関係はシューティングゲーム絡みだ! その狙撃手のあいつを殺せば最悪の場合は二人の友情を壊す事になる 其れだけは出来ない!」
(スレイプニル)「……以外に親切だね」
(遅群)「俺は人を…殺したくないだけだ!」
スレイプニルは正面から突っ込み、遅群は左に左折した。狙撃手は遅群に照準を合わせて遅群に攻撃をした。スレイプニルはその隙に男性との距離を一気に300mまで距離を縮めた。
(遅群)(目的は捕獲だ。あれに自分(男性)の意思があれば何とか説得して目覚めさせる事が出来る。 もしも、逆だったとしても――)
遅群は男性との距離を維持しながら銃弾を回避し続けた。
(遅群)(もしも、意思があればそろそろ――)
狙撃手はスレイプニルが近付いて来るのに気付き銃口をスレイプニルに変更した。
(遅群)(予想通り!)
遅群は笑みを浮かべると男性の方に突っ込んだ。スレイプニルは攻撃をかわして男性の上に乗った。遅群も丁度にスレイプニルと合流した。
(遅群)「スレイプニルそのままで頼む」
(スレイプニル)「分かっておる」
(遅群)「俺はお前の友人に頼まれて来た。直ぐに夢から覚めろ!」
(男性)「こんな良い所を捨てたら俺は――」
(遅群)「夢の世界で人を殺せばその人との記憶を生涯忘れてしまいます どんだけ、大切な人も――」
(スレイプニル)「……だったら、人を殺しますか?」
(遅群)「…そうだな、いっその事、この世界の人間を全て殺そう」
遅群は都市の方を振り向き、刀を口元に近付けて舌で刀を舐めた。
(遅群)「…今から、あの都市に居る人達全員を殺して来る」
(男性)「止めてくれ!」
(遅群)「…嫌なら直ぐに夢から覚める事だ。タイムリミットは10分。それまでに夢から脱出すれば貴方の大切な人の記憶は全て護られますよ」
遅群はそう言うと都市の方に向って走り出した。
(男性)「…どうしたら」
(スレイプニル)「早くした方が良いですよ。彼は本気ですから」
男性は目を覚ますか迷っていた。
(スレイプニル)「……貴方が本当に彼等の事を思っているのなら目を覚ますべきです。あの男(遅群)は本気で全員を殺す気です」
(男性)「…だが、どうやって目を覚ませばいいのか……」
(スレイプニル)「簡単な事ですよ。心の中で『目を覚めろ! 目を覚めろ!』と念じ続ければ目を覚ますでしょう」
スレイプニルの言う通りに男性は心の中で《目を覚めろ》と唱え続けた。すると、男性は夢の世界から現実の世界に戻って来た。それと同時に遅群も戻って来た。
(男性)「…俺は」
(遅群)「夢の中で夢に堕ちていました」
(男性)「俺は夢の中で幸せだった。会えない人とも会えた」
(遅群)「それは良い事です。眠る時に見る夢には複数のパターンが存在します。一つは記憶を整理する夢…これは起きてから眠るまでの間に視聴した出来事を整理整頓する。二つ目は正夢…これは予知夢と殆ど同格である。少し先の未来を見てしまう事。そして、今回、貴方が体験したのは夢の未来都市と言う人が今までに経験してきた全てを隔離させて夢の中に永久に封じ込む」
(男性)「何故、そんな事が?」
(遅群)「俺にも詳しい事は分かりません。ですが、一つ言えるのはあの夢の世界は現実の世界でネガティブな思考を持つ人を喰らっている」
(男性)「…喰らう」
(遅群)「正確に言うと生きたまま永久に眠らせて現実の世界とシャットダウンさせる。最悪の夢の原理だ。……それはそうと現実の世界に戻って来れた事に歓喜です」
(男性)「俺は夢の世界が――」
(遅群)「夢って言うのは目標にして叶えてこその夢です。留めるのは夢なんかじゃ無い」
そう言うと遅群は部屋を後にすると丁度、依頼主の男性が戻って来た。
(依頼主の男性)「どうでした?」
(遅群)「大丈夫ですよ。お友達は目を覚ましましたから」
依頼主の男性は笑顔で部屋に入って行った。
遅群はオートバイクを使って特殊討伐班の部署に戻って来た。
(遅群)「墓道、依頼は終わったぞ」
(墓道)「初任務御苦労さま」
(遅群)「一つ気になる事がある」
(墓道)「何だ?」
(遅群)「組織の後ろ盾は誰だ?」
(墓道)「……」
(遅群)「今回の任務で助けた男は議員になる夢を見ていた。夢に違和感は無かった。だが、議員の思想を持つ者は今の世界では稀だ。特殊と名の付く組織のバックには議員等の権力者が居るのは相場が決まっている。そこでだ…あの二人は友達では無い……議員のスタッフの二人だ。部屋の中は二―トらしい部屋だったが本当は議員が借りた安全の為の移動場所……詰り、これは本当の事件を介しての入隊テストだった。違うか?」
(墓道)「…少し違うが正解だ。何処で気付いた?」
(遅群)「最初に気付いたのは依頼その物だけどそれは依頼主が知人ならば話は合う。だが、行って見れば俺の知らない人達。そこで違和感を覚えた。それに臭いが無かった」
(墓道)「臭い?」
(遅群)「生活臭だ。生活の臭いが最近だった。これは何かしらの都合で引っ越しをしたと言える。次に部屋の汚さだ。友達が居るのに部屋の汚さが少ない。彼氏や彼女がお互いの部屋に来たのであれば話は別だが来るのは特殊討伐班のメンバーだ。そうなれば部屋は汚いままで良い筈だ。結論、あの部屋は二人の部屋では無く、非常用の隠し部屋と言ったところだ」
(墓道)「成程ね……それだけで確信するほどお前は馬鹿じゃないよな?」
(遅群)「あぁ、帰るタイミングで外から依頼主が帰って来た。タイミングが良過ぎる。あれは外からの監視が無くては無理だ。依頼主以外にあの部屋を監視していた人物が二人は居た」
(墓道)「二人か――」
(遅群)「一人は部屋の監視、もう一人は依頼主に状況を説明する役割だ」
(墓道)「良い所だ」
(遅群)「違うか?」
(墓道)「全て正解だよ」
(遅群)「……さてと、今回は此処までだったな。俺は帰る」
(墓道)「お疲れ様、報告は明日にでも」
(遅群)「了解」
そう言って遅群は特殊討伐班の部署を出た。
(墓道)「…最悪のシナリオを回避するには遅群の能力が必要不可欠…阻止できるのか……いや、絶対に阻止する!」
墓道の机の上には【海賊ファイル】と書かれたファイルがあった。
その頃、死夢現間の地下深くでは着物姿の女性がある牢屋の前に立っていた。
(女性)「彼ならこの狂獣の力を扱える筈……でも、今は様子見にしときましょう。彼の力量を調べて私が計画に入れるかどうかを計らなくては――」
女性の後ろの牢屋の奥から荒い吐息と共に強烈な唸り声が地下を響き渡る。
(女性)「狂獣も暴れたくて仕方ないのね……それも宇宙の誕生からずっと此処に居るものね」
その時、天雲が地下に降りて来た。
(天雲)「こんな所に居たのですね」
(女性)「あら、様子を見にね」
(天雲)「狂獣の様子は?」
(女性)「大丈夫よ。落ち着いているから。其れよりも何しに来たの?」
(天雲)「そうでした。例の大会が近付いています。早く誰を何所にするか早く決めて下さい」
(女性)「そうでしたわね。早く戻りましょう」
そう言って女性と天雲は地上に向った。
その頃、何も知らない遅群は三弓家で御馳走を食べていた。
遅群の周りで大きな変化が訪れる。それに全員はどう対処するのか!?
死夢現間~再勧誘と夢に堕ちた者~ 完
死夢現間~死者の導きと大会の勧誘~ 続く――
遂に物語は辛くて悲しい未来へと動き出す! 影の苦労人達は何時も険しい任務を行っている! だが、その分にお互いに笑い合って暮らしている! 特殊討伐犯はみんなに笑顔を守れるのか!? 次回は死後の世界へ! 新たなヒロインが登場!