闘争の幕開け
『急げ!赤城が死んでもいいのか!!』
「うるせ〜!!俺だって全力で走っているわ!!」
カミサマの予言の通り、俺達は町外れの工場に向かって急いでいた。
『おい!そこの角を左に曲がれ!』
「はぁ!?コッチの方が近道だぞ!?」
『俺を信じろ!!』
「・・・解ったよ!!」
半ばヤケクソに角を曲がると、そこには
「音ヶ崎先輩!!」
「矢車!お前ここで何を?」
『音ヶ崎!赤城ニセが危ない!ヤツに・・カインによって町外れの工場に攫われた!!』
「・・・あと何分で死ぬ?」
『十一分だ。』
「間に合わない・・・おい矢車!このまま走っても無駄だ。」
「じゃ、じゃあ・・・」
「いや、一つだけ方法がある。俺の腕を掴め、矢車!」
「はい!?」
「いいから!」
俺は言われるがままに先輩の腕を掴む。
「俺の才能、The man who inherit breath《息を受け継ぐ者》は過去の偉人の才能を操る才能!」
そう言って先輩は右手を前にだし、叫んだ。
「才能名、Wright Flyer《機械仕掛けの翼》!!」
その瞬間、
「な、なんじゃこりゃ!?」
突然金属のガラクタやくず鉄が先輩の背中に集まり、何かの形を作り始めた。
『この才能は《機械仕掛けの翼》。自らの背中に翼を作り、物理的に飛べるようになる。正直、使っている所を見たのは久しぶりだ。」
「飛ぶぞ!」
「え、ちょ」
その瞬間、体が宙に浮く。
「行くぞ!!」
「ここは・・・どこ?」
赤城ニセの意識は朦朧としていた。
「わ、たし、たしか部屋で勉強してて・・窓が・・空いたから見に行ったら・・・っ!!」
「お、起きた?」
「!!あ、あなたは誰!?何で私を!?」
「安心して。変な事はしないよ。」
一息おいて、目の前の黒服の男は喋り出した。
「君は選ばれたんだ。」
「選ばれた?」
「そう、そして君は“才能”を“手に入れた”。過去形だよ。」
「手に入れた・・?才能って・・なに?」
「一口に言えば超能力だね。ちょっと違うけどね。」
「超能力・・・?」
「そう、そして“これが君の才能だ”。」
そう言って、黒服の男は一人の女性を手招きした。
髪は赤茶色で長く、後ろでポニーテールにしている。
体の発達は平均程度で身長から察するに、高校生のようだ。服装は赤城の通っている学校の制服を着ている。
その姿を、赤城ニセは知っていた。
「これは・・・私・・なの?」
体格、身長、服の着こなし方、髪の色、全てが同じだった。
ただ一つ、その目を除いて。
「違う・・・これは私じゃない!!」
彼女の目は本来の白目の部分が黒く。黒目の部分は赤い、ギラギラとした目だった。
まるで、悪魔の様な。
「誰?誰なの!?」
「言ったじゃないか。“これが君の才能”だって。」
「私の・・・才能・・。」
「君の才能は“The body 《無限の肉体》”。
自らの分身を無限に生み出す才能だ。」
「分身・・・。」
すると、その赤城ニセの分身は喋り出した。
「よう、“本体”さんよ。初めまして。」
「あなたは・・・本当に私の分身なの?」
すると、
「何が“分身”だ!!笑わせんな!!私は私。それだけだ!」
「!!・・・ごめんなさい・・」
「私は絶対にあなたを消す。
私こそが“本体”にふさわしい!」
「え、それって・・」
「そうさ。あんたを殺すんだよ!」
すると、彼は赤城ニセは激しく首を振った。
「!!ヤダ!!まだ私は、会いたい人が・・」
「ああ、矢車元仁のことだろ。
あんた、男の趣味悪いね〜。あんなのどこが・・」
「違う!矢車君はそんな人じゃない!!きっと私を助けに来てくれる!!」
「はあ?!あんた馬鹿か?!どうやってあいつはあんたが連れ去られたって知るんだい?それにもしあいつが来ても・・」
そう言って横にいる黒服の男の腕に抱きつき、ニヤリと笑って続ける。
「カインさんがやっつけてくれるしね!!」
まるで、自分の彼氏の自慢をしている女子高生のように嬉々として言った。
「それに、私の才能の方があんたより数千倍強いわよ!!」
「え?あなたも才能を?」
その言葉には、黒服の男、カインが答えた。
「いや、本来君の才能は自分の肉体を大量に生み出すだけだ。分身に才能を与える力はない。」
「じゃあ何故?」
すると、彼は横にいる分身の頭を撫でながら、言った。
「こいつは、君の才能の“エラー”だよ。こいつは自我を持っていた。ただの操り人形じゃなくてね。だから、記念に僕が与えたのさ。」
その言葉に分身が続けた。
「そう!つまり彼の才能と彼から貰った私の才能のタッグにあんなヘナチョコとあんたの才能のタッグで勝てるわけないのよ!!」
その時、赤城ニセはふと、その言い方に違和感を覚えた。
「待って!矢車君も才能を?!」
カインが答えた。
「ん?ああ、あいつの才能は・・・」
カインが言いかけた時、やかましい音と共に、工場のドアが開いた。
そこには、青年が一人立っていた。
「うそ・・・なんで?」
「矢車君!!」
「待たせたな、ニセ!」
青年は、矢車元仁その人だった。
才能解説コーナー
音ヶ崎 空
才能名:息を受け継ぐ者
“The person who inherit breath”
あらゆる希望の才能を発現させる才能。
説明:才能開花者の中には自分の才能に希望を抱く者と絶望する者がいる。その中で才能に希望を抱いた才能開花者の才能を自由に発現させ、操れる。性質上、“偉人”と呼ばれる者の才能を発現させることが多い。
氷上 稲葉
才能名:夢破れし大預言者
“The great prophet of the broken dreams”
知識欲を満たす才能
説明:過去、未来、現在のあらゆる真実を知る事が出来る。その真実は絶対で、他人がどれだけ頑張ろうと変える事は出来ない。
矢車元仁
才能名:無限の精神
“The soul”
精神の力に比例して力が上がる才能。
説明:全くもって未知数の才能。本人の精神力によっては無限の成長性を得る。
赤城ニセ
才能名:無限の肉体
“The body”
自分の肉体を無限に操る才能
説明:自分の分身を増やす、自分の肉体の欠けた部分を再生するなど。ただし生み出した分身に原則自我は無く、また肉体の再生も“欠けた部分に取り付ける”だけなので当然痛みを伴う。
カイン
才能名.:息を殺す者
“The person who kill breath”
あらゆる怨念の才能を取り込み、発現させる才能
説明:“息を受け継ぐ者”の対となる才能。過去の才能開花者の才能のなかで才能に絶望を抱いた才能開花者の才能を自由に発現させ、操れる。
性質上、“狂人”と呼ばれる者の才能を発現させることが多い。
その他、音ヶ崎が使った偉人の才能
才能名:21人を撃ち抜いた銃
説明:偉人、ビリー・ザ・キットの才能。能力は弾道操作。
才能名:“My best friend is truth《我が最愛の友は真理なり》”
説明:偉人、ニュートンの才能。能力は重力操作。
才能名:Wright Flyer《機械仕掛けの翼》
説明:偉人、ライト兄弟の才能。能力は近くにある金属で自分の背中に翼を作れる。とても目立つので音ヶ崎は滅多に使わない。