crazy roulette
とある一人の少年が、とある学校の廊下を走る。
「はあ・・急がないと。」
少年は文芸部に所属しており、今からその部活の部室に行くところなのだが・・・。
「お、遅れたあああ!!」
終礼の後、ぐっすり寝ていたらしく、既に教室はもぬけの殻だった。
「わ、悪い・・・!!遅れた!」
「遅いよ、二十分のオーバーだよ?」
「面目ない・・・。」
部室には誰もいない。正面に座っている少女一人を除いて。
「いくら実質的には活動してなくても、時間は守ろうよ。矢車君。」
「ああ・・すまん。ニセ。」
少年は、矢車元仁。少女は赤城ニセ。二人ともただの高校生。"少なくとも赤城ニセは"。
「それより始めよう。部活動」
「ああ、わかって・・っ!・・マジかよ。」
「なに?何か言った?」
「いや・・・今日オレ部活動できないわ。」
「なんで?」
「いや、今日は個人的な用事があってな。それを言いにここに来たんだ。」
「そうなんだ・・・分かった。じゃあね」
「ああ。じゃあな。」
そう言って、俺は部室を飛び出す。
「これでいいか、"カミサマ"。」
『ああ、素晴らしい。』
俺が"カミサマ"、と呼ぶ存在、ある日謎の男の人がくれた携帯から聞こえてくる声の主。
さっきも携帯に繋がってるイヤホンから今日は部活を休めと言われた。
『ならば、"次の予言"だ。』
彼は不思議な才能を持っている、"俺と同じように"、ただ俺とは比べ物にならないほど強大な、予言の才能だ。だから俺はカミサマに従っている。
『the great prophet of the broken dreams!』
カミサマが予言するときに言う呪文、おそらくカミサマの才能名だ。 日本語で『夢破れた大預言者』、て意味だったか・・・。
『・・・帰りにバスを使わず歩いて帰れ、バスジャックが原因で事故が起こる、規模は甚大、乗客全員が死ぬ。』
「なに?!」
こんな感じで。そして俺の役目は・・・
「なら、尚更助けなきゃ!!行くよ、カミサマ!」
『やれやれ、やっぱりな。』
俺の"才能"『精神力を代価に新たな力を手にする才能』でカミサマの運命を変える事だ。
「ふう・・何とか間に合った・・・。」
『そんなに息切れして・・・大丈夫か?』
「大丈夫だ。絶対に何とかする。」
『次のバス停から乗ってくるぞ、二人だ。気を付けろ。』
「乗った後は?」
『三十秒後に1人が運転席の方に移動、もう一人が後部座席の方に移動、運転席の奴が発砲。』
「OK。」
そうこうしているうちに、次のバス停に到着した。
(あいつらか!!)
見るからに怪しい2人組がいる。他の人はいない。
(発砲するなら、乗り込まれる前に・・・!)
ドアが開く瞬間に席から立ち上がり、ドアの方に飛び出す。
「"The SOUL"!」
才能名を言いながら、開いたドアの向こうにいるバスジャックに向かって拳を突き出す。
無論、ただのパンチなどではない。
「「なっ・・・ぐわあああああっ!!」」
バスジャックが2人とも風圧で吹き飛ぶ。
「ざまあみろ!犯罪者!」
バスジャックのポケットから拳銃が転げ落ちる、それを見てバスジャックは急いで拳銃を拾い上げ、こちらに向ける。
「死ね!」
「なっ!」
『右に飛べ!』
カミサマの言うとおりに、俺は咄嗟に右に避ける。
「ぐわっ!」
その拍子に肩を強く打ち付けてしまった。
「クソが!ちょこまか動くな!」
そう言って、バスジャックが銃をこちらに向ける。
(撃たれる!)
そう思った時、
「The man who inherit breath《息を受け継ぐ者》。〝才能名 21人を撃ち抜いた銃〟」
そこには青年が一人立っていた。
青年が才能名と思われる物を唱えると、
青年の手に銃と思われる物が現れた。
「撃ち抜け。」
青年が、引き金を引くと銃口から銃弾が射出された、無論、ただの銃弾ではない。
「がっ!」
「ぐわっ!」
その銃弾はあり得ない軌道を描きながら、バスジャックの手元の銃を弾き落とした。
「あ、貴方は・・・」
矢車はその青年に見覚えがあった
「もう、あんまり無理するなって言ったよね。」
「音ヶ崎さん!!」
彼にあの不思議な携帯を与えた張本人、音ヶ崎空だった。