ある少年の末路 2
翌日
「はあ?誰からだこれ?」
葬式の時の少年、氷上稲葉は自分のベットの上で目を丸くする。
今日から独りの生活、叔母が引き取ってくれたが、叔母は今年一年家に居ない。
なので早起きの為に携帯のタイマーで目覚めたのだが・・・。
「メール?誰から?」
朝起きると、新着メールが一件。知らないアドレスである。
「何だこの内容・・・、ニュースのアプリとかじゃないよな?」
【氷上流奈の隠している秘密
世間体の為に氷上稲葉を引き取った。自分が世話するつもりは無い。
昨日、九月十日、友人と協力し現金一千万を騙し取ることに成功。】
そこには、叔母のやったことが書かれていた。
「な、何なんだよ。」
『力、だよ。』
その瞬間、目の前が真っ暗になる。あるのは携帯と目の前にいる見飽きた自分の姿をした少年。
「ち、から?」実感が湧かず、片言になる。
『そう。君だけの、神が与えた力。』
「神?」
『そう、願いを叶えるカミサマ。』
「カミサマ・・・。」
『さあ、その力で見るんだ。真実である、君の真の敵である、憎むべき殺人犯を』
「・・・。」
口の中の唾液を飲み込み、携帯を見る。
ブブッ、と携帯が振動しメールが届く。真実の預言が。
『さあ、使え!力を実感しろ!君の望みは何だ!』
「オレの望みは・・・。」
思い出す、弟の最後の言葉を。
本当はこの力で自分の心の虚無感を、穴を、埋めるためと知りながら。
その理解が、曲解だと知りながら。
「オレが敵を取ってやる・・・!」
『良く言った。』目の前の自分が手を叩く。
自分を無視してメールを開く。
【氷上稲葉の欲している真実
弟殺しの犯人。坂間田健。】
「坂間田、健!!」
画面に表示される名前を憤怒の眼で睨みつける。
『さあ、裁け。その男を。』
目の前の自分が嘲笑しながら言う。その嘲笑の意味はもう解りやしない・・・。