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妹の心模様

 なんだか最近妹の様子がちょっとおかしいんだが。

 いつもなら、お兄ちゃ~ん、って小がものごとくちょこちょこ後ろをついてきてくれるはずなのにそれがなくなっている。

 兄離れをしたというのならば俺としては喜ばしい話であるのだが、何か違うようにも感じる。なんかトゲトゲしている。


「恵。女の子の日か?」


「妹にそれを堂々と聞く兄が世界中を探してどれだけいるのやら……別に違うし」


「そうか。ならいいんだが」


「いや、女の子の日じゃないことを確認してそれでいいかで済ませるって兄として何が聞きたかったのか反応に困るよ」


「いや、なんだかな?俺に心当たりがないことでツンケンされてると俺が対応しづらい」


「じゃあお兄ちゃん聞いてくれる?」


「ああ。俺はいつでもお前の味方だぞ」


「さすがお兄ちゃん」


 そう答えた妹の声には張りがあまりない。元気印が取り柄のこいつには珍しいことだ。なんだかこっちの調子も狂ってくる。


「……お前風邪引いてんのか?」


「そんなことはないと思うけど……」


「ちょっとデコ貸してみろ」


「ん」


「なんでくちびる突き出してくる。顎引け」


「ん~」


 何を期待してるんだこいつは。

 とりあえず、デコに手を当てて自分の額と比べてみる。


「熱いな……ちょっと体温計持ってくるか。今日は終了だ。パジャマに着替えとけ」


「え~お風呂は入らせてよ~」


「余計に熱上がるだけだっつの」


「じゃあ体拭いて」


「……ついでに持ってきてやるからちょっと待ってろ」


 兄に体拭いてもらうなや。自分でやれ、とでも言ってやりたいところだが、実際問題体調は悪そうだし、最近ワガママもあまり言わないからな。こんな時ぐらい聞いてやるのが兄の務めというものだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一つ思ったのが持っていくのは全然構わないのだが、俺が布団へと誘導したのは俺のベッドであることと、風呂桶にお湯を汲んだわけだが、こぼす可能性高いですね。まあいいよ。どうせ俺の部屋だし後片付けすんのも親じゃなくて俺だし。

 親よ、私がここまで自立してくれる孝行息子でよかったですね。


「お兄ちゃん。終わった」


「見せてみろ」


 37.8度。まあ、風邪のひきはじめといったところか。昨日も花菱さんの家に遊びに行ったとか言ってたし、ずっと慣れないこともやってきたから今疲れが出てきたのかもしれない。休息は取らせているつもりだったが、やはりそれは”つもり”なのであって、恵にとっては完全に疲れを取るようなものではなかったのかもしれない。


「明日は学校休め。俺が連絡しとくから」


「え~」


「お前勉強できないわりには学校好きだよな」


「学校に行けば色んな人と会えるよ?」


「世の中にはそれが煩わしい人間もいるのだ」


「合法的に香夜ちゃんやアリサちゃん、美沙輝さんと会えるのも学校だよ?」


 学校じゃなければ非合法的な言い方はやめてもらえませんかね?なんか悪い手口を使ったみたいに聞こえちゃうでしょうが。同意の上だよ。

 自分のお兄ちゃんを犯罪者扱いするのはやめてください。近いものはあるのかもしれないけど。というか、予備軍ではないかとここまで言われてると最近は感じつつもある。


「で、なんだ?体拭いて欲しかったんだっけか?頭は蒸しタオルを後で持ってきてやるから、背中拭いてやればいいか?」


「隅々までお願い致します」


「……それこそ妹にそんなことを言われる兄もいないぞ」


「体がダルおもなのです。手をあげるのもめんど……辛いです」


 今面倒って言いかけただろ。お兄ちゃん聞き逃してませんよ。


「……まあ、お兄ちゃんは私より香夜ちゃんの方がやりたいよね」


「お前は妹だから兄である俺は許されるが、香夜ちゃんだったらガチで捕まりかねないぞ。未成年なのに」


「同意ということにしとけばお兄ちゃんが持ってるゲームでは好感度が上がるイベントとして消化されるよ」


「お前、俺の(大半は初神のもの)ゲームやったことあったか……?」


「可愛い女の子が出てくるのって目の保養になるね」


 香夜ちゃんは最近俺に毒されていると言われてなんか辟易してる様子だったが、恵の方は天王洲先輩と美沙輝から悪い影響を受けてるような気がします。別に、人の趣味嗜好を否定しようなどという気はさらさらないが、もっと言えば恵に釣り合う男が早々いるかという話だが、さらに言えば恵のことを許容できる猛者がいるのかどうかという……


「お兄ちゃん、病床の妹を前に散々に貶してくれるね」


「お兄ちゃんは妹の将来が心配なのだ」


「妹はお兄ちゃんの思考回路の方が心配なのですよ」


「で、今からどうすんだ?全部脱がせりゃいいのか?」


「ちょっとここのセリフだけ抜き取って香夜ちゃんに聞かせたい」


「お前は俺をどうしたいんだ……」


「お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなの‼︎」


 恵は俺に面と向かって言い放った。

 それ以後は、俺の目を真っ直ぐ見ている。相変わらずくりくりしてて可愛らしい目である。

 まあ、出てるものはその目ぐらいで、それより下は布団で隠して少し恥ずかしがってるようにも見える。

 恥ずかしいのなら言わなきゃいいのに。


「……俺は恵だけのお兄ちゃんだし、俺の妹も恵だけだ」


「そんなこと言って、香夜ちゃんとかアリサちゃんにもツバつけようとするし」


「……義妹って萌えないか?」


「……義妹って何だっけ」


「血は繋がってないが戸籍上妹のこと」


「お兄ちゃんは私がいながらーー……」


 そのまま倒れこんでしまった。体調悪いくせに変に声をはりあげるから。

 まあ、張り上げさせたのも俺だが。


「ほら、体拭いてやるからバンザイして」


「お兄ちゃん。私の下着姿を見て興奮しないでよ?」


「んなことを言える余力があるなら一人で出来るな。俺は飯を作ってくるから一人でやってろ」


「すいませんでした〜一人じゃ寂しい〜」


「だったら余計なことを言ってるな」


「はーい……」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 え?サービスシーン?

 そんなものこの作品にあるわけないだろ。あれなら年齢制限をつけなければな。最近は限界に挑戦してる少年マンガもあるけど。いや、あれアウトじゃね?どれとは言わないけど。

 口ではあーだこーだ、美少女ゲームがあーだこーだ言う割には健全なので。あってもパンチラがいいとこじゃね?

 そんな楽屋的な話はいいのだが。

 実際のところどうだったのかって?

 お前は血の繋がった妹に興奮できるのか?できるっていうやつは妹がいないやつか、義妹か、ガチでヤバいやつの三択だからな?

 ひとつわかったことは、妹はくすぐったがりだったということぐらいだな。さすがに前を拭いてやるのはアウトだと双方同意が得られたので、自分でやらせました。

 今は、寝てんのか、どうなのか分からんがとりあえず着替えだけ置いといた。タンスを開けたがさすがに子どもパンツはなかったな。何を確認してんだと言われそうだが。

 そして、今はさすがに胃の中に何も入れないのはよくないということでお粥を作っている。

 実際のところさっきからグダグダ語っているところで全ての行程は終わってすでに部屋の前までたどり着いてるけどな。


「入るぞ」


 元より俺の部屋なのだから俺が断る通りなんてどこにもないのだが。


「あのな?恵。いくら兄妹であろうと、脱いだものを兄の部屋に脱ぎ捨てておくんじゃない」


「後で回収しといて〜」


 さすがに下着ばっかりは恵も恥ずかしいと思ったのか自分で分けて洗っていたのだが、それすらも面倒なのか。


「とりあえずお粥作ってきたが食べるか?」


「食べさせて〜」


「よし、布団の中から顔を出して口を開け」


 勢いよく出てきた。お前、熱はあるけど実はかなり元気だろう。


「あーん」


 吹き出した。


「あっつうい!」


「誰も熱いから気をつけろとも、熱くないとも言ってない」


「言ってよ!」


「普通は確認するものだけどなぁ」


「妹を使って遊ぶなあ!」


「香夜ちゃんの時は善処しよう」


「妹の時も善処して!」


「ほらあーん」


「冷ましてください」


「しゃーねーな」


 息を吹きかけてお粥を冷ますことにした。一回かき混ぜた方が冷めるかもしれんな。


「ほら、口を開けろ」


「あーん」


 今度は吹き出さずに食べている。うんうん、女の子があまりはしたないことをしてたらダメだぞ。


「誰のせいなんだろう……」


 そっちのほうはいいのだが、まあここに服を散らかしてる時点ではしたないも何もあったもんではない。


「しかし、意外にこれも疲れんな。あとは自分で食え」


「全部食べさせてよー」


「お兄ちゃんは優しいが甘くないのだ」


「妹が空腹で倒れたってお母さんに訴えるよー」


「それはマジでやめてください。ぜひともやらせていただきます」


「お兄ちゃん、お母さんを何だと思ってるの?」


 この世で一番面倒な存在だと思っております。

 しばらく俺と鉢合わせにならないように帰ってきてください。


「思春期?」


「お前に思春期言われたかねえな。ほら、喋ってないで食うんだったら早く食え。片付かないから」


「もう、お腹いっぱい」


「また後で食べるか?」


「なんか……こう……プリンとかヨーグルトとかの方が食べれそう」


「あったかなあ。なかったら諦めろ」


「それはどうするの?」


「こっちは俺が食う」


「じゃあよろしくお願いします。ふああ」


「眠いんなら寝ていいぞ」


「お兄ちゃんどうするの?」


「一緒に寝たくはねえな。蹴落とされるし」


「すいません……」


「ま、隣で布団敷いて寝るから安心しろ」


「ありがと、お兄ちゃん」


 少し経って、寝息が聞こえてきた。

 デコに手を当てるとまだかなり熱い。食欲ないのも頷ける。後で冷えピタでも貼っといてやるか。

 さて、プリンかヨーグルトね。

 下に降りて冷蔵庫を探った。


「ねえな……」


 プリンもヨーグルトも、消化の良さそうな果物もなかった。あるのは、肉。

 喜ぶだろうけど、今のあいつに食わせるようなものではない。


「買いに行くか?……しかし、あの状態の恵を置いていくわけにも……」


 ふと、香夜ちゃんに連絡を取ろうと思ったが、その手を止めた。

 香夜ちゃんがバイトなのもあったが、そもそもこんな状態の時にまで香夜ちゃんを頼っていては恵が余計に不機嫌になるだけだろう。

 女の子は複雑だとはよく言ったもんだな。


「……美沙輝なら近いし聞いてくれるだろ」


 兄として妹の期待に応えないわけにもいかず、結局誰かを頼っていた。

 こういう時親がいないってのは面倒だな。放任主義が過ぎる。

 ただ、妹が考えてることが読めず、看病でオロオロしてるようじゃ、彼女も夢のまた夢ではないかと感じていた。

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