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主人公不在ですが物語は平常運転です

 察することだと思いますが、語り部である佐原育也さんは色んな意味で抹殺されたので、本日は私が語り部を務めます。東雲香夜です。

 明日には復活されると思います。およそ人間の回復力ではないと思います。

 じゃあ、この主人公の変態紀行を楽しむだけの物語にその主人公が不在で何をしていくのかということになりますが、あくまでそれは先輩が視点であるので先輩が主人公なのであって視点が変われば、その視点の人が主人公になれると私は思います。

 めちゃくちゃな論理だと言われても構いません。めちゃくちゃな論理を押し通していくのが私ですので。


「香夜ちゃーん。早くいこー」


 少し前で私をめぐちゃんが呼んでいます。今日は日曜ですので、お出かけです。バイト?先輩に押し付けてきました。有給休暇です。死にかけたのによく動けますね。今度の土日からという話でしたが、前倒しで働かせることにしました。給料は私のところに入ります。

 先輩を働かせて自分が遊んでいるのは心苦しいとか、そういうことはまったくないですが、先輩がいないのはちょっぴり退屈です。気づけば隣にいたような気がします。

 ですが、今日はめぐちゃんだけではありません。花菱さんも一緒です。


「やっぱり、佐原先輩がいないと退屈かな?」


「そんなことないよ。あの人は何をやらかすか分からないから……」


 退屈はしないだろうけど、ハプニングは多数になりそう。私が関係ないところでも誤爆しそうな勢いだから。

 ……昨日も胸触られたし。私には弾力なんてない。触るとペタペタ音がなりそうなほどだ。どうしたら大きくなるんだろうか。ないものねだりなんだけど、ここまで発育が悪いと何が原因なのかわからなくなる。親がそんなに私みたいなわけではない。

 でも、まだ一年だし、大きくなる保証は……

 隣を見て私はため息をついた。同い年なのに、本当に何が違うんだろう。


「ど、どうしたの?私が来たのイヤだった?ゴメンね。それなら帰るから……」


「ごめんごめん。そんなことないよ。ただ……ね」


 もう一度ため息をつく。

 花菱さんのことが嫌なわけではない。むしろ、好意的に取ってるぐらいだ。

 多少は花菱さんのほうが背があるとはいえ、小柄なのは変わらないのにこの差はなんなんだろう。


「香夜ちゃん。落ち込まない落ち込まない」


「めぐちゃんは悩み事なさそうでいいね」


「なんてことを。私だって人並みにあるんだよ」


「例えば?」


「明日学校なのが憂鬱なのです」


「そう?」


「サ○エさん見てさらに憂鬱感が高まるのです」


「見なきゃいいんじゃ……」


「そこから行ってQ見て、ダッシュ島見て」


「十分に日曜を満喫してるじゃない……」


 この子のどの辺りに日曜日に憂鬱感を覚える必要があるのだろうか?私は基本的に日曜日はバイトである。土曜日は美沙輝さんが開いてくれているお料理会とめぐちゃんの勉強を見ている。定例なので、先輩は言わなかったけど、昨日ようやく別の会場にしないか、という話が出た。だいたいそういう話をすると次の厄災が来るのだが、噂をすればなんとやらで先輩のお母さんが帰ってきた。

 私は知ってたからよかったけど、結局先輩が色々割を食ったみたいで、あの後は普通に帰ったのだけど……やっぱり普通ではなかったかもしれない。

 なんかお詫びとか言われたけど、先輩のお母さんがタンスの肥やしとなっていた試作品をいくつかくれたのだ。お詫びも何も、私たちが使わせてもらってる立場なのだからそんなのは必要ないのだけど。

 でも、まあ使わないのであれば使ってあげなければ服がかわいそうである、との理由で譲り受けた。ちなみに私が渡されたものはめぐちゃんが小5ぐらいの時のものだそうです。

 ……なんかとてもやるせないです。めぐちゃんと小学校は同じですが、クラスは違ったのであまり話す機会がなかったのでその時の容姿を思い出すことは難しいですが、少なくともその時はまだ私ぐらいの背だったということです。そのめぐちゃんは今160ぐらいです。私と15cmぐらい差があります。

 中身は見た目相応になっていないですけど。


「よーし。今日は香夜ちゃんをコーディネート第二弾だよ!」


「昨日服もらったばかりなんだけど」


「まあ、ぶっちゃけ私が着せ替えして楽しみたいだけです」


「兄妹なのにこうも似るのかな……」


「アリサちゃんも一緒にするよ」


「どっちを……?」


「着せ替えする方」


 なぜか主導権をめぐちゃんに握られてしまった。いつも握ってる側なのでたまにはいいかもしれない。この兄妹には振り回されっぱなしなのだけど。

 そして、花菱さんの方といえばなんだかキョロキョロしている。いつものショッピングモールじゃなくて気分転換で商店街の方に来ているのだけど、物珍しいんだろうか。


「何か興味のあるものある?」


 だから、私はちょっとでも歩みよる精神があることを見せるために私から話しかけてみた。よく考えたら私から話しかけることなんてあまりなかった気がする。


「こういうところ初めてで……あ、あれなに?」


 正直、商店街というものもところどころシャッターが下りてるのも目立つし、花の女子高生が揃いも揃って来るような場所ではない。

 めぐちゃんだけ背が高いので、高校生に見られると思うが、私と花菱さんは私服なので下手すれば小学生……花菱さんは服の上からでもわかるものがあるので私よりいいか。

 しかし、道行く人若干遠巻きなのは花菱さんがいるからだろうか。見た目だけ言えば普通に外国人だし。どちらの国の人かわからないし。本人はロシア語は聞き取れるけど話せない程度だし。


「ねえ、花菱さん。英語はできる?」


「そりゃ読み書き程度なら……でも、いざ話すとなると勝手が違うから会話しろってのは無理だよ」


「そっか」


「なんで急に?」


「いや、もし話しかけられたとしたらまず英語で話しかけられるんだろうなって考えたら、その時に返答できるのかなって」


「正直話しかけてきた時点で事案ものだと思うんだけど」


「だよね。……そうだ、あそこに行ってみよう。めぐちゃん、私の服はどうでもいいからこっちいこ」


「ええ〜どうでもよくないよ〜」


 なんとか主導権をこちらへ戻したところで駄菓子屋に寄ってみた。商店街にはまだあることが驚きである。勝手なイメージだけど、個人で構えてるようなものしか想像したことなかったし。そもそも、私もあんまり来るところではない。駅から近いところという条件でここにしたのだ。ショッピングモールは駅から若干遠いのである。

 ここ、って行き先を決めてるのならまだしも適当に行くには面倒という立ち位置。まあ、女の子が雑貨見たり服見たりするなら1番いいんだろうけど。

 でも、特に興味がわかない私は女子力が低いのでしょうか。


「すごい……これ30円で買えるの?」


 花菱さんがとった一つの駄菓子を見て驚愕している。あなたは普段お菓子はなにを食べてらっしゃるのでしょうか。


「もっともところどころ元は10円だったものもあるけどね。消費税のあおりを受けてるんだよ」


「あ、見てみてこれなんて5円だって。いくらでも買えちゃうね」


 昔ながらの5円チョコを今度は目に付けた。そういえばこれだけは変わらないな。まあ、5円チョコのフレーズで売ってるのに10円払わされてたらおかしな話である。


「お菓子だけに?」


「言われると思ったけど、めぐちゃんだけには言われたくなかった」


「ならば50円チョコにしよう」


「もっとマシなチョコが買えると思うな……」


 めぐちゃんの代替案は誰にとって得があるのか。お菓子会社にも小売店にとっても、消費者にも得がないような……。

 この子はそんな深いところまで考えてないだろう。兄妹そろって考えが浅いのだ。逆を言えば私が言葉尻を深く考えすぎなのかもしれないけど。


「色々買ってこ!あとで私の家に招待するわ!」


「あ……」


 花菱さんが適当に目に付いたものを手に取っていく。

 その小さな体躯に不釣り合いなほど積み上がったお菓子をレジへと持って行った。

 普段こんなに買う人はいないのだろうか、それとも女の子がバカみたいに持ってきたことにレジに座っていたおばあちゃんは驚いていた。

 おばあちゃんはヨタヨタとゆっくりお菓子を通していく。

 ……こんなところで時間を食うのもバカらしいな。

 おばあちゃんがそんな俊敏にできるはずもないので、私が袋へ入れるのを手伝った。

 結果的にお菓子ばかり大きいレジ袋を三つも使うことになってしまったが、おばあちゃんはニコニコと見送ってくれた。

 おばあちゃんも私たちが高校生とは思っても見ないんだろうな。


「よーし、私についてきて。ちょっと遠いから車呼ぶよ」


 そして、私たちの行き先は急遽花菱さんの家へと変更となった。

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