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友達できるかな

 友達の定義ってなんだろう。

 親友の線引きってなんだろう。

 そんなことを考えたことがある。

 俺に親友と呼べるほどの付き合いをしてきたやつがいただろうか。多くないと言ったが、友達がいないわけではない。だけど、そいつと毎日一緒にいるわけではない。

 友達というやつの作り方なんてわからない。適当に喋って、適当に付き合って、いつのまにか縁がなくなってる。そんなもんだって、何十年と、死ぬまで付き合ってくようなやつにいつか出会うことがあるんだろうか。

 なんなら、香夜ちゃんは今は恋人ではないので、親しい友達と書いて親友と呼べる関係なのかもしれない。それを失うことは怖い。

 でも、香夜ちゃんが他の人と友達付き合いがあったからといって、俺と付き合いが消えるわけではない。

 いつか、新しく出来た友達と過ごす時間の方が長くなって、俺なんかいなくても大丈夫な日が来るのかもしれない。

 それでもいいだろう。香夜ちゃんが笑って過ごせているのならそれでも。

 香夜ちゃんはそれが怖かったんだろうか。いつか、離れる日が来ることが。もしかしたら、一生涯付き合いが続くかもしれないのに。だからかな。付き合わない人間とは壁を作って隔てて、付き合うとした人にはべったりで。

 でも、今日は新しく友達が出来ることを期待した。声をかけてみると言ってくれた人がいたから。なんとなく香夜ちゃんと雰囲気似てるし、仲良くできるといいんだが。

 そう思っていた矢先だった。


「せ……先輩……」


「どうした香夜ちゃん」


 というか異様な光景だった。俺が今まで見た限りで香夜ちゃんが何でもないところで息が上がってるのを見たことなかったからな。


「なんか息が上がってる香夜ちゃんも色っぽいな」


「そんなこと……言ってないで……助けてください……」


 そう言ってフラフラ俺の後ろへと隠れた。身長差的に十分に隠れているが本当にどうした。

 元凶はすぐに現れた。


「東雲さん!逃げるってどういうことよ!」


「あ~花菱さん?」


「佐原先輩!東雲さんを出してください!」


「……別にここ2年の教室だからって下級生が入っちゃいけないわけじゃないから入ってきてもいいぞ」


「私ルール的にそれはダメです!」


 どこのルールだろうか。他にもあるのなら聞いてみたいが、帰らす方が先決だろう。今はまだ昼休みである。もう終わりかけだけど。そんなに全力で鬼ごっこしてたのか。

 でも、花菱さんの方はあまり息が上がってないので香夜ちゃんだけ全力で逃げてきたのだろうか。


「……香夜ちゃん。何があったんだ」


「私を見るたび抱きついてくるのでかわして逃げてきました」


「ゴメン。何があったのかよくわからなくて微妙についていけてない」


「何も言わずにいきなりですよ。とりあえず逃げるのが先決でしょう」


 まあ、確かにいきなり抱きつかれては反応に困るだろう。この子はスキンシップの方法だけは外国譲りか。ロシアがどうなのか知らんが。


「ハグは万国共通の挨拶だってママに聞いたのに!」


 日本では通じないからこれから気をつけましょうね。ていうか、今までそれをやってきたのか?やられた奴ら羨ましい限りだぞ。


「でもハグはとても好きな人にしかやっちゃダメなんだって」


「……君がとても好きでもこちら側が意味不明すぎて怖がってるからな。何も言わずに抱きつかれても怖いだろう。例えば、俺が花菱さんにハグしようとしたとする。どうする?」


「通報します」


 ぶっ飛びすぎ。犯罪者扱いかい。君と一つしか変わらないんだよ。やっぱり思考回路的には二人は似通っている。特に人を勝手に犯罪者扱いするあたり。それともなんだ?俺が悪いのか?あくまで例えしか出してないのだが。


「……まあ、通報するかどうかはさておき、香夜ちゃんは花菱さんを今現在怖がってるっていうことだ」


「そんなあ……私、どうすればいいんですか」


「とりあえず、今のところは帰って、また放課後にしなさいな」


「うう……お騒がせしました。失礼します」


 足取り重く帰って行った。この状態では友達できるかなって状態でもあるまい。

 とりあえず、帰ったのを見計らって香夜ちゃんを席に落ち着かせた。


「ありがとうございます先輩」


「まあ……やり方が悪かったとはいえ、向こうも悪気はないし、香夜ちゃんと友達になりたいって思ってるみたいなんだ。許してやってくれ」


「ならそうと、初めから言ってほしいものです」


「なんか、その前兆みたいなものはなかったのか?」


「どちらかといえば、先輩がゲリラ的に来るのが怖いのでそっちにアンテナ張ってましたので。内部からとは予想外でした」


 いや、別に内部も外部も敵ではないからね。そこ間違えないように。てか、ゲリラ的になんだ。俺は自然現象的な類なのか。


「お、佐原の彼女か」


「いいえ違います、変態さん」


「いや、二度目ぐらいの対面で人を変態呼ばわりする後輩を初めて見たぞ」


「事実だろう。ギャルゲーマー」


「お前もだろ⁉︎」


「公認なので問題ない」


「そいつはよかったですね‼︎」


「そろそろ忘れられててもおかしくないレベルだし名前ぐらい言っとけよ」


「そういや言ってなかったっけか?俺は初神だ。こいつの前の席。いや〜今回クジ運よかったわ」


「むしろ俺にとっては最悪だ。矢作の方が連絡網的な話で都合が良かった。今からでも懇願して変わってくれ」


「お前は本当に友達がいがねえなあ!」


「お前に恩売っても……なあ?」


「ちくしょー、俺は動かねえからな!動かしたければテコでもショベルカーでも持ってきてから言いやがれ!」


「用意は出来そうだが、そんなもんに頼らんくても権力を行使すれば可能といえば可能だな」


「お前……とうとう教師を買収したのか」


 すげえ人聞きの悪いことを言ってやがる。どうやってただの一般ピーポー家庭で教師を買収すんだ。


「告げ口するだけでお前の場合は十分だよな」


「そんな慈悲のないことすんじゃねえよ!」


 キーンコーンカーンコーン


「チャイム鳴っちゃったな」


「よし、俺この授業ボイコットするぜ」


「ボイコットしてどうすんだ?」


「代わりに香夜ちゃんを置いていく。なに、俺が命令したとか言っておけ。この担当教師は俺に対する評価がすこぶる低いからそれで通るか、もしくはボケてるから代わってることすら気づいてねえかもな」


「いや……あの……」


「向こうには体調崩して保健室に行ったってことにするから気にすんな」


「いや……ですから……」


「じゃあ行ってくる」


「いや、まだ予鈴ですから全然間に合います。普通に帰りますから」


「あら、そう。香夜ちゃんの代わりに授業受けようかと思ったけど」


「なんの意味もないでしょう。あれだけ言っておけば向こうも放課後まで我慢するでしょうし」


「別に満更でもないのか」


「いきなりすぎて戸惑っただけです。では、戻ります。ありがとうございました先輩」


「うん……まあ、気をつけてな」


 何を気をつけるのか。そんなことはよくわからないが、そんな無責任な言葉で見送った。

 花菱さんも悪い子ではないだろう。行動が直情すぎるだけで。

 似たものかと思ったけど、香夜ちゃんの方は思った以上に受け身のようだ。

 さて、花菱さんが香夜ちゃんにどう影響与えていくんだろうな。

 ……そういや、昨日あの場に恵もいたけど、特にこれといって言わなかったな。あいつはあいつでなにを考えているのやら。ただ、静観を決めていた。

 明日、昼放課にでもあいつの様子を見に行くか。

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