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43話:回顧録

 今から伝える情報は、香夜ちゃんと俺がどんな関係なのか。今日に至るまでのその経緯である。

 まあ、多種多様なやつらが関わってく可能性があるが、結論だけ言わせてもらえば、仲のいい先輩と後輩という関係でしかない。それ以上の説明はしようがないことを先に言っておこう。

 それ以上を求めるのは、俺たち自身が決めることなのだから。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 まず、出会ったのは恵がうちに連れてきたことからだ。

 何をやるか具体的には決まってなかった翌日から勝手に連れてきてどうしたもんかと思っていたが、俺がやることを快諾してくれたことから今だと週4〜5程度来てもらって家庭教師のようなことをしてもらっている。事実、恵を教えるのなら同学年でも足るぐらいなのだから、恵に問題があるといえばあったのだけども。

 だけど、快諾はしてくれたものの、俺自身、香夜ちゃんという人物像を把握していなかった。もしかしたら、知ってるかもしれないが教室まで覗きに行って観察をしていた。まあ、たぶん、その段階だとあまり好かれてなかったかもしれないな。俺の方からデートに誘ったけど、あまりいい顔されなかったからな。

 ちなみに、この時期に恵の方はといえば、天文部に入った。こいつの目標があまりに果てしないものだから、どうしたもんかと思ったが、やりたいことがあるならやらしてやろうってことでな。だが、今12星座がちゃんと月ごと言えるかぐらいすら俺は把握してない。自称言えるらしいから、よかったら聞いてやってくれ。

 しかし、デートと言っても恵が乱入にしてきたからデートにならんかったな。お互いのことを少しでも知るという目的は達したけどな。

 かくして、この時期だと仮入部期間なわけだが、この時まで二人に所属している部活を隠していた。自分自身の意志で入りたいところを決めてもらいたいと俺は思ってたからな。

 でも、結果を見てもらって分かるように恵は天文部に入り、香夜ちゃんはこの部に入った。入った理由も入部希望者がいなくて可哀想という同情によるものだけど。

 まだ、恵が何を目指しているのか、その目標言ってなかったな。

 勉強は常にトップ、運動は助っ人に引っ張りだこ、頼まれたことはすでに終わってるようにし、ゆくゆくは生徒会長らしい。

 まあ、いろいろ無理難題なことなんだが、やると言った手前、香夜ちゃんもそれを手伝ってくれると言ってくれたんだ。

 ただ、勉強を教えているだけじゃ色々手が届かないことがあるからな、目指すからにはなんでもできなきゃいけないってことで、そこの美沙輝に料理を週に一回教わってる。うちで行ってるから、よかったら来てもいいぞ?

 え?イヤだ?……まあ、いいんだけどな。

 この後だな。この辺りでゴールデンウィークに入ったわけだが、1日完全に空き日にしてたんだ。だけど、暇という理由で香夜ちゃんがうちに訪ねてきて、前回のデートを邪魔した罰ということで、今度こそ二人でデートすることに成功した。

 でも、俺がやらかしちまってな。香夜ちゃんが逃げちゃったんだ。香夜ちゃんは中学時代は陸上部でかなり速い選手だったらしくて俺はあっという間に置いてかれちまった。まあ、まさか探しに行かないわけはないけどさ。ようやく探し当てたはいいけど、香夜ちゃんナンパされてたんだな。香夜ちゃんがあしらってくれるんならそれでよかったんだけど、香夜ちゃん泣いててさ、そこで俺がナンパしてたやつにドロップキックで噴水に蹴落とした。え?傷害罪?乙女の危機を救わずヒーローは名乗れん。まあ、どう考えても向こうのほうが面が悪いから不利になるのは向こうだけどな。そいつは三人組だったんだが、そのナンパしてたやつだけ警察にご厄介になったらしい。

 そんなことはどうでもいいや。ここが一番大切だ。俺と香夜ちゃんの関係を象徴してると言っていい。でも、まあ、俺はどうにも軽薄になりがちだからな。こちらがどうあれ、向こうからはあまり本気にとられてなかったんだな。

 何が言いたいんだって?

 恵は知ってるし、言ってるが告白されたんだ。ただ、付き合いたい、男女の関係になりたい、そういった感情はそこにはない。それ以前にそんな関係になってしまったら、俺が立てている計画が破綻しちまうからな。恵を一人前にするまではそういう関係は結ばない、そう約束したんだ。

 だから、相思相愛だぞ。俺が一方的に迫って、追い回してるわけじゃないからそこ誤解しないように。

 まあ……かといって、俺たちが付き合う未来があるかどうかなんて分かりやしないからな。香夜ちゃんはきっと、俺以外の男とあまり深く関わってこなかったんだ。だから、なにか誤解してるのかもしれないし、勘違いかもしれない。香夜ちゃんが他に好きな人ができれば止めはしない。まあ、香夜ちゃんの方からではなくて、無理やりって形なら力ずくでも返してもらうけどな。

 今は、みんなとワイワイやってるのが楽しいんだと思う。香夜ちゃんはあまり人と関わるってことをしてこなくて、それを知らないみたいな子だからな。俺一人が独占していい子じゃないんだ。今は少ないかもしれないけど、この部だってもっと人数が増えれば人と関わることも多くなるだろうし、本来なら、クラスで友達作って欲しいんだけどな。だから、俺みたいな変な先輩を掴まされちまうんだ。

 でも、俺は香夜ちゃんが望むならその通りにするし、できる限り泣かせるようなことはしない。

 どう俺のことを見てるかわからんけど、君が思ってるほど俺は酷いやつではないぞ。

 なんで、自分で言うかって?自分で言わなきゃ誰も言ってくれないからな。俺の場合は素行が悪いとかではなく、ただ単に人望が薄いんです。成績トップでも人が集まってくれるかと言われたらそうでもないという証明品だよ俺は。

 でも、少数派でも付き合ってくれるやつがいるんなら、それは大切にしないとな。ただえさえ希薄な人間関係がさらに希薄になるのはあまりよろしくないぞ。

 誰に言ってるのか自分でもよくわかんねえな。

 まあ、香夜ちゃんとの関係は以上だ。登場人物はもう少しいるが、あまり香夜ちゃんとは関わり合いがないために割愛させていただく。









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