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4話:いつだって妹は兄を見て育つ

 よく、年子の兄弟とかだと、上の真似事をするために似たり寄ったりなことになることがあると思う。

 身近な人にいないだろうか。

 まあ、うちは男と女だったからそうはいかなかったようだ。

 妹は親にかなりどころかめちゃくちゃ甘やかされて育った、と言ったが、それは俺も原因だろう。

 大抵、兄弟はある程度の歳になると上が下を鬱陶しがるものだが、俺自身は妹を猫可愛がりしたせいで、自分でほとんど何もできない子に育ってしまったのである。


「だから、贖罪も含めて自分が何とかしよう。そういうことですか」


「俺もあまり甘やかさないようにしようってアレかな」


「それにしてもよく撒けましたね」


「ああ、あいつポンコツ言う割には足だけは5秒間のみ速いからな。そこで全力を使い切るから、あとは逃げるのは楽だ」


「セーブすればいいということは学ばないですからね、めぐちゃん」


「あいつには学ぶということを学ばせる必要がある」


「……どうやってうちの高校受かったんでしょうね。私学とはいえ、ちゃんと試験はあってそれなりのところなのに」


「私学は定員割れが出ないようになるべく多めに取ってるんだぞ。だから学力においての格差が激しかったりする。香夜ちゃんは勉強のできるクラスだろ?」


「ええ。だから、一応階も他の一年とは分かれてたりするんですけど、どうやったらめぐちゃん間違えるんだろう……」


 バカだからです。としか言いようがない。そうとしか形容ができない、うちの妹はなんなんだろう。


「それで、今日はどこへ連れてってくれるんです?お金はありませんけど」


「さすがにアトラクションをおごってあげられるほど俺も金はないからなあ。あまり高くないものならプレゼントできると思うけど」


「ならウインドウショッピングが中心ですか?」


「適当に回って香夜ちゃんが気に入ったものがあれば買ってあげるよ。まあ、限度はあるけど……」


「甲斐性は期待してないからいいです。確かにお金はないと言いましたけど、少しぐらいなら遊べますよ」


「出来た子だな、香夜ちゃん」


「あの子と一緒にいればイヤでも出来る子にならないといけないですから。先輩もそうだったんじゃないですか?」


「気づいてなかっただけでそうなのかもな」


「……気づかなかった幸せってありますよね」


「何に対しての話だ?」


「いえ。妹がポンコツだと気づかなければ幸せだったのかもしれないということです。そうすれば、養うだけで終わりますから」


「それはそれで妹がさらにダメ人間になっていく未来しか見えないんだけど」


「そうですね。だから、今回においては気づけた幸せということです」


 この子はいつからあいつが出来ない子だと気づけたんだろう。

 もしくは気づいていたが何かしらの庇護欲でも働いて付き合っているのかもしれない。

 出来ない子ほど可愛いとはよく言ったものだ。うちの妹はその典型である。


「時間も潰せそうですしカラオケでも行きます?」


「俺は構わないけど」


「ただし、先輩の喉が潰れるまでの耐久レースです」


「香夜ちゃんは歌ってくれないの⁉︎」


「いいですけど、音痴ですよ?私」


「ものすごく嘘っぽいんだけど。大体音痴ならカラオケを提案したりしないだろう」


「無駄に推理力がありますね。ええ、別に音痴ではありません。喉は潰したくないですけど」


「で、結局行くのか?」


「先輩がその後お昼をおごるというタイムテーブルで行きます」


「きっかりしてんなあ」


 俺が先導して行くはずだったのに、なぜか、後輩に主導権を握られてしまった。

 まあ、女の子のワガママに従うのも付き合わせた男の義務だろう。

 駅で待ち合わせたので近場にはカラオケ店ぐらいあるだろう。


「これで恵のやつが待ち伏せてるとかないよな」


「めぐちゃんにそんな頭はないと思います」


「……なあ、香夜ちゃん。本当に恵の友達か?」


「ああ見えてもめぐちゃんは友達多いですよ。良し悪しはありますけど。なんというか、相手に依存するのがうまいというか、めぐちゃんを見てるとなんかやってあげなきゃみたいな気持ちになっちゃうんですよね」


「あれ?意外にポンコツではない?」


「甘えるのがうまいだけで本人の能力はヒドイもんですからね。突き詰めればポンコツです」


 やっぱりこの子は友達なのか疑わしくなってくる。

 まあ、恵曰く他に見当たらないらしいのでそれはそれで付き合ってくれるのはありがたいのだが。


「見つけました。お兄ちゃん」


「呼んだ?香夜ちゃん」


「いや、私は先輩のことをお兄ちゃんとは呼びませんが」


「じゃあ空耳だな。行こっか」


「ちょっと待て!」


「なんでお前ここにいるんだよ!恵!」


「さ〜てなんでかなぁ〜。お兄ちゃんが冷たいからではないでしょうか。お兄ちゃんは妹の友達と仲良くデートしてますし」


「普通妹ならば察してくれて放置してくれるものだけどな」


 そもそも撒いたはずなのにどうやって追いついた。


「ふふふ。妹は兄の行動パターンなんてお見通しなのですよ」


「ここ選んだのは香夜ちゃんだけどな」


「……実は駅で待ち合わせるだろうと先回りして、影から見てた」


「愛されてますね。先輩」


「愛されていたら影からこそこそ来たりしないと思うんだ」


「まあ、別に見られて困ることをするわけでもないですし、このまま放置しても可哀想ですから一緒に連れて来ましょう」


「だな……」


「やったー!香夜ちゃん大好きー!」


「はいはい」


「ついてくるのはいいがお金はあるのか?恵」


「お兄ちゃん払っておいてください。あとでお父さんから徴収します」


「親を自分の財布にするなよ……」


 このように親が自分に激甘なので、俺が抑えるように言ったが、月一ぐらいでこんなことをしてる。

 まあ、香夜ちゃんも俺といるより笑ってるように見えなくもないし、良かったのかもしれない。

 頼んだ側としてはいささか情けない話であるのだが。


「先輩。行きますよ」


「うん?ああ」


 妹は先に行ってしまったのに対し、待ってくれているあたりは敬意は払ってくれてるのだろう。妹と後輩の差だな。

 カラオケに関しては妹がマイクを離さないので、恵のワンマンショーとなりました。

 腕前はまあ……よくも悪くもない。平凡だ。

 やはり、いきなり突出したものを見つけ出すのは難しいものだ。

 こいつ、本当になんで来たんだ?

 妹の真意は掴めないまま、今度はお昼ご飯をおごらされるハメになりましたとさ。



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