あ、その儲けは全て私の懐で
文化祭当日を迎えた。
まあ、うちの部長といえば初めてだというのに段取りがよろしいようで、きっちり前日に全て終わらせていきました。後ろ盾が強いのもありますけどね。マジ生徒会長は生徒会長。
言ってる意味がわからない?俺も分かってないから平気だ。何が平気なのかサッパリだが。
アリサちゃんの方はあれでよかったのかという感じだったが、正直、あの親父をこちらに呼び寄せた時点でこちらの勝利はほぼ確実だったらしく、アリサちゃんのお母様が言いくる……もとい説得したそうです。
男が女に口で勝てるわけないのにね。
「はーい、集合」
一応最初は教室スタートなんだが、その前に一通りの流れを確認しておくために家庭科室に集められていた。5人しかいないので本当に回せるかどうかはやってみないと甚だ疑問なところはあるが、そこはぶっつけ本番でやるしかないのがシュミレーションできない懸念点でもある。加えて、1時間に1人抜ける計算だからなあ。下手すると入れ替わりで二人いないことすらもありえる。天文部から告知がてら人を支給してくれるそうだが大丈夫なんだろうか。
「そうすっと、誰か出突っ張りじゃねえか?」
「まあ、他のところより早く閉める予定だからその時間で休憩すればいいわ」
「社畜根性が丸出しだぜ……」
「残業させるわけじゃないから文句言わない」
「せめて人がいりゃいいんだがな……料理できるのが3人しかいないってファミレスも驚きのブラックさだぞ」
「あんたが来てくれてよかったわ」
「貸しは作っとかないとな」
「いや、むしろ借金返済でしょ。働け」
「ちくしょう……」
出ないからね。仕方ないね。ただ、試作品作りでは1発OKをもらってたので、山岸がいるのといないのとではかなり差があるだろう。
「これでちょっとは部員獲得もできるといいけど……」
「今からの移動は無理だろ。来年に向けて頑張ろうぜ。この子らも後輩できないのは可哀想だろ」
「正直この子たちも料理作りたいって入ってきた子じゃないんだけど……」
お情けですよね。
その意識のせいなの?二人がイマイチ上達しないの。
「えっと、一番最初に抜けるのは……」
「俺だな」
「あんた10分ぐらいで来そうね」
「トップバッターで店番させられてるのにそんな扱いあるか⁉︎」
「うちの出店なんて大したもんじゃないから大丈夫大丈夫。根回しはしといたから、最初10分ぐらいだけ居させてこっちに送っといてってあんたと最初一緒の子に言ってある」
「確か5人ぐらいで回してなかったか?」
「5×7よ。最後に最初の人がもう一度行くサイクルよ」
「俺はハメられたのか?」
「早く終わるから私も行くし文句言わない」
「なんでクラスの出し物にまで手を回さないといけないんだ……」
「じゃあ、それには私たちも行きます」
「香夜ちゃんたちのクラスは何やってんだ?」
「……何やってましたっけ?アリサちゃん」
「なんで知らないの……?屋台でタコ焼き売るって言ってたよ」
「じゃあ、差し入れにそれ持って行きます」
「ああ、うん。楽しみにしてるよ」
「ところで先輩たちのところって何やってるんですか?」
「……お化け屋敷だったか?」
「全てトラップ形式だから、引っかからなかったら何も怖くないわよ。暗くしてるけど」
「じゃあ、全部引っかかってみます」
「やめてよ!」
香夜ちゃん怖がりなので何もないに越したことはないだろう。逆にアリサちゃん怖いもの知らずなので、相性的にいいのか悪いのか分からんな。ちなみに美沙輝の役割は案内役なだけなのでこいつは余裕ぶってます。中に入れやろうかしら。
「山岸はなんかやってんのか?」
「聞いたところで誰も来ねえだろ……」
「まあな」
「じゃあ、聞くなよ」
クラス単位の出し物は絶対だが、部単位での出し物は申請したところだけという話だ。
必然的に飲食系、大体屋台物が多くなる。ともなると、うちの部の出し物ってかなり競争率の高いものなんだよなあ。人が来てくれるのかしら。
「まあ、始まるのは朝も中途半端な時間だし、お客さんが来始めるのは11時過ぎが目処でしょ。とりあえずそれを目安にやっていくわ。あと接客の二人は天文部の告知も一緒にお願いね」
「はーい」
「じゃ、解散。特に二人は人に捕まらないように」
「捕まえてくるの先輩だけだと思うので」
「いや、恵ちゃんも可能性が……」
「そこの兄妹は邪魔しないように」
「俺は物理的に不可能だから恵に言っといてくれないかな……」
それよりも俺たち兄妹の扱いはなんなの?そんなにやったらめったら人目もはばからないようなことはしませんよ?
恵も恵で副会長でやることあるだろうし、天文部の方も活動がある。俺たちのところに来る余裕もないのではないだろうか。
……少し行ってみささはあるな。こちらが早めに切り上げられて、プラネタリウムがやってれば見に行ってもいいかもしれない。
ラストのお化け屋敷の案内役も残ってるけども。
「ついでに今回の儲けは全て私のポケットマネーとなるのでよろしく」
「「ふざけんな⁉︎」」
「まったく、冗談が通じないわね。部長として、出た利益の管理をするってだけよ。はい、今度こそ解散。HRに間に合わなくなるわよ」
「こんなんで遅刻扱いもされたくねえぜ」
しかし、あいつのポケットマネーとしてしまう発言は微妙に信憑性があるところが管理という言葉を持ってしても不安が拭いきれない。
いや、まあ食材とかがそこから買えるのなら、どうせ俺たちじゃやらないだろうしあいつが管理してくれるのが一番いいんだろうけど。でも、今でこそ美沙輝がほぼ何でもかんでもやってるが、来年、再来年とまだ続いていくのであれば、香夜ちゃんやアリサちゃんがそれをやっていくのだ。
……なんだろう、二人が仕切ってる姿が全く目に浮かばないぞ?後輩たちからも可愛がられてる姿ばかりが目に浮かぶようだぞ?
まあ、年上で先輩でもある俺からの目線なので、来年、後輩からは頼れる先輩となってることを期待しよう。
まあ、俺たちの教室はすでにお化け屋敷と化しているので、廊下に所狭しと座ってHRをしてましたとさ。いや、邪魔だろ。すぐはけるけども。
ハメを外しすぎない程度に楽しむようにと適当な忠告を受けて、最初に店番する人以外は各々行きたい場所、もしくは自分の持ち場へと向かって行った。
さて、文化祭の始まりだ。