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14話:教えて初神君

 うちの高校は私立なので市外からきている生徒もそれなりいる。まあ、寮とかはないので全員通いなわけだけど。

 去年同じクラスだった初神は中学の区切りが隣というだけだったので、家としてはそこそこ近い。いったん、そこに身を置かせてもらうとしよう。


「てめえは了承も取らずによく来やがったな⁉︎」


「一方的に取ったのでセーフ」


「ふざけんなよ⁉︎」


「どうせ暇だろう。家を追い出されたんだ、入れてくれ」


 正確には自主的に出てきたのだが、正直追い出されたという言い方でも半分あってるので問題ない。

 俺自身には色々問題はあるのだけど。


「だいたい、お前妹の世話をするとかなんとか言ってなかったか?もう終わったのか」


「それを巡って俺の家で争いが勃発したので逃げてきた」


「誰だよ……あの香夜ちゃんって子か?」


「香夜ちゃんだけだったら平和だったんだよなあ」


「なんで遠い目をしやがる」


「香夜ちゃん以外に一人加えたら修羅場になった。俺はそれに耐えられなかったので逃げました」


「別に修羅場って、妹の世話をするのになぜ修羅場になるんだ。お前を巡って何か始まったのか?」


「ちょっとの齟齬がそれを生んだのだ」


「何があったんだ……」


「何も聞かずにいれろ。早くしないと嗅ぎ付けられる」


「犬かよ」


「警察犬以上だと思う。まあ、来るかどうかはこの際置いておこう」


「仕方ねえな。入れてやるよ」


「ついでに殺気立った女の子の扱い方についてご教授できないか?」


「……俺に対する嫌がらせか?」


「嫌がらせついでに聞こうかと。逆に」


「なんの逆なんだ⁈」


 とりあえず居座って本棚にあるマンガを適当に手に取る。

 そして、くつろぐ。


「お前、本当に何しに来たんだ?」


「え?遊びに来た」


「絶対違うと思うんだが。そして、何も言わずマンガを勝手に読むな」


「マンガだけ読み放題のマン喫じゃなかったのか」


「だったら金取るわ俺。ドリンク出ねえけど」


「だろ?だから、金は払わない」


「あれ?……まあ、いいや」


「仕方ない。本題に入ろう」


 俺はマンガを閉じて、近くの机の上に置いておく。特にこれが伏線とはならない。


「女の子の扱いがわからん」


「俺もわからん」


 終わり。


「ダメだろこれ」


「終わらせるなって話だよな」


「終わらせたのお前だろ」


「根本的に相談する相手を間違っている。俺が相手取れるのは画面の中だけだ」


 要するに美少女ゲームでしか無理ということだ。どんだけ残念なんだ。もう少し協力してやろうとかその無駄にゲームで培ったテクを伝授するとかないのか。


「よくよく考えたら俺たち16なのに18禁やってちゃダメだよな」


「移植版のやつなのでセーフ」


「業界的に考えたら18禁じゃなくて15禁ぐらいにしたほうが儲かりそうではあるよな」


「それだと表現の問題があんだろ。15にもなれば知識はあるだろうし問題はないといえばないのかもしれないけどな」


「残念ながらうちの妹は……いや、俺の本を見つけたとか言ってたな。知ってるか」


「何に対しての残念ながらなんだ」


「じゃあ、それでいいからご教授頼む」


「頼むっていう態度ではないな。何様だお前は」


 面倒なので床に横になって、結局またマンガを読みながら頼んでいた。頼みたいという気持ちはあるが、別にそこまで焦ってもいないというのが現実なのだ。だから、こんなやる気ない感じなのである。言ってしまえばほとぼりが冷めるまで待てばいいだけだしな。俺が帰るまで火が点いてたら目も当てられないけど。


「うし、目標は3時だ。それまでになんとかなだめる方法を模索する」


「お前がさっさと帰って土下座でもすりゃ早いんじゃねえの?」


「そんなもんはプライドが許さん」


「お前のプライドなん女子の前ならあってないようなもんだろ。諦めろ」


「プライドを持つ時点まで到達してないお前に言われたくねえや」


「ちげえねえ」


 認めちゃったよ。こいつもこいつでそんなんでいいのか。


「で、ことの発端は?」


「なんだ藪からスティックに」


「ル◯大柴語はいらねえんだけど」


「いや、予測変換がそれだったんだよ。予測変換に言え」


「藪から棒って前に藪からスティックが出るって相当だな」


「ルー◯柴がそれだけ流行ってるってことだろ。本人冥利に尽きるな。それはともかくこと発端だな。妹は休みだから遅くまで寝てるわけだ。しかし、昨日は香夜ちゃんがうちに泊まっていたんだが、良い子なので朝もちゃんと早く起きたんだな。だが、妹はぐーすか寝てるから香夜ちゃんが俺の部屋に来たわけだ。そこで、もう一人妹に料理を教えてもらうために頼んだやつが来たわけだ。そして、俺はそれを迎えに行こうとしたら、部屋の机に足を引っ掛けて、香夜ちゃんと組んず解れつな状態になり、それをそいつに目撃された、それが始まりである」


「なんか物語口調で言ったところでお前が悪いよな」


「香夜ちゃんは残念ながらまだ発展途上のようだ」


「最低だなお前」


「だが、小さくてもあの子は可愛い」


「……なんの話してんだ?俺はお前に同情すればいいのか?羨ましがればいいのか、リア充爆発しろとでも言えばいいのか、お前のリアクション見てると分からなくなる」


「まあ、さすがにそんな状態を見たら怒られるわけだ。香夜ちゃんの方は事故だということで怒ってなかったけどな」


「その子はお前に気があるんじゃねえの?」


「ラインが微妙なんだよな……。悪く思ってないのは分かるけど、かと言って恋愛感情がそこにあるのかはさっぱりだし」


「そんなリアルの相談されても、大抵ゲームなら触った時点でビンタは普通だからな」


「でも、現実で見たことないぜ?」


「そもそもそんなイベントが起きないからだろ……大体触ってるのなん付き合ってるバカップルぐらいだし。恋人未満が触れるイベントなんてそうそう発生しない、というか、そんなやつは大体女子といたりしない」


「よし、俺は勝ち組だな、やったぜ」


「ぶっぱなせっー!」


「ぐはっ」


 右ストレートがきまった。

 ただ、そんな盛大に飛んだりしない。飛ぶ場合ってどんぐらいの力で殴ってるんだろうな。


「俺は……とりあえずお前が怒ってるいることに気づいた」


「そいつは立派なことだ。そんなに周りに女子がいるなら一人ぐらい紹介してくれませんかね」


「ちなみに修羅場を作ったやつの一人はクラスメイトだけどな」


「知ってるやつなのかよ」


 彼女の名誉のために名前は伏せておく。大体情報は出揃ってるので確定するのは早そうだけどな。


「じゃあ、次に特徴を言っていく。お前がプレイしたことのあるゲームに同じような子がいたらその通りの選択を行っていくから頼むぜ」


「ぜひともバッドエンドルートの選択肢を選ばしてやる」


 どうしたものか。男子目線のギャルゲーだから大体選択肢なんて絞られてくると思うんだが、現実でそううまくいけばなんの気苦労もない。現実はクソゲーだとよく言ったものだ。

 今から心配しても仕方ないので参考程度にでも聞いておくか。


「一人はクールでミステリアスな子だ。だが、頭は良く、優しい子で俺のことが気になってるのではないかという立ち位置」


「後半お前の願望じゃね?」


「まあ、いるだろ。一人や二人ゲームならそんな子も」


「俺もお前が言うほどやってるわけじゃないけどな……」


「もう一人は責任感が強く気立てのいいやつだ。根本は優しいはずなのだが俺にだけ厳しい。本人曰く特に俺に特別な感情はなかった様子」


「フラれたのかお前」


「今朝言われたな……予期しない形で。てっきり俺に気があるもんだと思ったのに。ちなみに小学校からの同級生だ」


「幼なじみってわけか」


「……幼なじみの定義ってなんだろうな」


「定番はどこかの伝説の木で結婚の約束とかだな」


「特にそういうのはないな。別に腐れ縁とか言うわけでもないし、家が隣同士だったとかもない」


「偶然高校が一緒だった。それだけのことか」


「まーそういうこったな」


「確かに特別な感情なくてもおかしくねえな。そいつに男っ気がないのなら可能性はある」


「美人だと思うし、料理上手いから引く手は数多だと思うけどな。性格上いなさそうだ」


「気立てがいいと言ったのにどっちだそれは」


「あれだろ。高嶺の花ってやつ。とてもそうは見えんが」


「お前の評価が分かんないせいで俺もどう教えればいいのか分かんねえじゃねえか」


「仕方ねえな。誰か教えてやるからそれでなんとかしろ」


「おう」


「宮咲だ」


「……俺には対処できん。諦めてくれ」


「だから言わなかったんだ」


「でも、お前の妹がどんな子か分からんけど目指すならいい目標じゃねえか?」


「美沙輝が?」


「美人だし、頭だっていいはずだし、料理研究……今は同好会だっけか?部長やってんだし、料理上手いはずだろ」


「あとは運動ができれば言うことなしなんだが……」


「宮咲ができるって聞いたことねえな」


「別にどんくさいイメージはねえけど」


「大体小学校から一緒ならそれぐらい知ってるだろ」


「運動は良くも悪くも目立たない感じだった」


 なんか小学校って普通に生活してたら出会わないタイプの子も普通に話して遊んでたりするんだから分からないものだ。

 ただ、中学、高校と上がって付き合いがあるかどうかはまた別ものであるけど。


「じゃあ、久々に会った女の子ってポジションでいくか。そんな関わりがあったわけじゃないんだろ?」


「言ってしまえばそうだな」


「正直、気の強い女子は扱いは簡単といえば簡単だ」


「ほう」


「さらに世話焼きときたもんだ。さらにハードルはぐぐっと下がる。いつも、気張ってて自分が何かやらないとっていうタイプだからな。ちょっと優しくすればいける」


「現実はそんなに甘くない」


「ですよねー」


「だが、考え方としてはそうだな。美沙輝を優先して優しくするっていうのがコンセプト的にはアリだ」


「ていうか、下の名前呼びなんだな」


「小学校の時はそう呼んでたしな。わざわざ変えるのも変な話だろ」


「お前は頭いいのか天然なのかハッキリさせろよ」


「? 俺は至って普通なつもりだが」


「そういうところが、俺とお前の差なんだろうな」


「いやいやお前と比べるなよ」


「そうか?」


「正直、天と地のほどの差があると思ってる。もちろん俺が天のほうだ」


「出てけ!」


 追い出された。

 まったく、友達がいのない友達だ。まだまだ言いたいことはあるんだが。

 それに香夜ちゃんの攻略法教えてもらってない。あの子、チョロそうで最難関だし。

 あと、あいつに言いたいことがあったんだ。


「おーい。今のままだとキャラが薄くて変態ということしか出てこないから眼鏡かけてインテリキャラにしてくれー」


「うるせえ!とっとと帰ってタコ殴りにされてこい!」


 取り合ってくれないようなので、家に戻るか。

 しかし、役に立たん友人だな。これなら矢作のほうがよかったか?まあ、あいつはあいつで恐怖症を患ってそうだけど。

 ま、付き合ってもらったし、土産話だけでも提供してやるとしよう。



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